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2022.10.08

プログリット岡田祥吾、上場引き寄せた「脱サークル」決断の理由

プログリット代表取締役社長の岡田祥吾(撮影=曽川拓哉)


「もともと私も英語が苦手で。でも学生の時、1年留学して努力をして話せるようになった成功体験がありました。一方、義務教育やスクールを含め多くの日本人が英語学習に時間を費やしているのに、一向に話せるようになりません。勝ち筋は見えていなかったものの、課題の多い英語学習の領域なら本気で取り組めると思ったんです」

しかし英語コーチング事業は半年間、軌道に乗らなかったという。2カ月で30万円(現在は3カ月約60万円)に設定したが、周囲からは「英語を教えるわけでもなく、自習させるだけなのに、誰が30万円も払うんだ」と否定の声がほとんどだった。

藁をもすがる想いで出会ったのが、エンジェル投資家で経営コンサルタントの故・瀧本哲史(たきもとてつふみ)氏だ。

「半年経つと、自分たちは相当未熟者だと分かってきて、自分たちの力だけでは成功するイメージがまったく持てませんでした。それで、著書を読んで私が大ファンだった瀧本さんを、先輩のつてで紹介してもらいました。

そのときに初めて事業と私たち自身を認めてもらえて『最高だ、君たちは絶対に成功する』と言ってもらえました」

岡田祥吾

瀧本氏との出会いから毎月のミーティングを重ね、その度に宿題をもらい、岡田らは愚直に実行した。そしてプログリットは成長曲線を描き始めた。

人(コーチ)が価値の源泉である労働集約型モデルのため、瀧本氏のアドバイスに従いながら人を増やすごとに会社も成長していった。

「私たちが戦略を考えることもなく、瀧本さんに言われたことを粛々と全て実行することにだけコミットしていたら、自然と事業が伸びていきました。瀧本さんに会えていなかったら、今のプログリットは存在していません」

ターニングポイント2 社員のエンゲージメントを意図的に下げた


プログリット設立から3年目、年間売り上げが17億円に達した2019年頃。岡田は「ある決断」を行った。

「英語コーチング」は1対1でコーチングを行う労働集約型モデルだからこそ、人を見極める採用活動を重視し、人間性を一番の採用基準としてきた。また、英語学習業界では、レッスン数の増減に対応できるよう非正規社員やフリーランスを雇い、人件費を変動費にして対応するのが一般的だ。

プログリットは全員が正社員。それは理念が隅々まで浸透し、一人ひとりが組織にコミットすることが重要だと考えているから。

しかし。

「プログリットでは、働いているみんなが幸せになれる会社を作りたかったんです。 2年目の頃に、『モチベーションクラウド』というサービスで社員のエンゲージメントを測ったところ、偏差値88を叩き出しました。でも私は喜べませんでした。数値があまりにも高すぎると。

実は業績は順調に伸びていた一方で、成長度合いが緩やかになりつつもありました。その時に、組織エンゲージメント率を下げようと決断しました」
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文=山岸裕一 編集=露原直人 撮影=曽川拓哉

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