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2022.10.08 13:30

ハリケーンと洪水の影響は健康面にも、懸念される感染症の増加


呼吸器系の感染症


ハリケーンの後は呼吸器系の感染症が増える。これは主に避難所で人々が密集するためだ。もちろん、新型コロナもよく起こる感染症のリストに新たに加わっているが、ほとんどの検査結果が報告されていないため我々は知る由もない。以前、新型コロナの報告をめぐって意見が対立したフロリダ州保健局の職員レベッカ・ジョーンズは解雇された。

洪水後はカビへの暴露が著しく増加し、暴露後すぐにアレルギー反応、喘息、慢性的な咳が続く。免疫抑制剤(化学療法やモノクローナル抗体)を投与されている人は侵襲性真菌感染症のリスクがある。清掃の際には鼻や口を覆う必要がある。

消化器の感染症


下水道が氾濫(はんらん)し、未処理の下水が流れ出ることもある。そうなるとさまざまな消化器の感染症が予想される。米国では大腸菌とノロウイルスによる感染症が最も一般的だ。ドイツではクリプトスポリジウムが大流行した(ミルウォーキーでは下水処理場の故障のために40万人がクリプトスポリジウムに感染した)。

ノロウイルスは非常に感染力が強く、わずかな飛沫でうつり、便へのウイルス排出が数週間続くこともある。このウイルスは細心の注意を払って清掃しなければ周囲の表面に留まる。ハリケーン「カトリーナ」の後、テキサス州ではノロウイルスによる嘔吐と下痢が問題となり、避難所にいた1000人以上が発症した。

また、下水で汚染された水によるA型肝炎もかなり懸念される。

動物由来の感染症


ズーノーシス(動物由来の感染症)にも注意が必要だ。今回のハリケーン「イアン」の前に、フロリダ南部ではすでにデング熱やウエストナイル熱の症例が報告されていた。浸水したままの地域があることから、フロリダ州西海岸で感染者が増えることが予想される。ハリケーン「カトリーナ」のときにはその1年後にウエストナイル脳炎と髄膜炎の症例が倍増した。

フロリダ州パームビーチ郡とハリケーンが直撃した同州リー郡では、ニワトリがフラビウイルスに陽性反応を示した。フラビウイルスはRNAウイルスの一種だ。このウイルス群には黄熱病、デング熱、ジカ熱、ウエストナイルのウイルスが含まれ、蚊が媒介する。

懸念すべきもう1つのズーノーシスはレプトスピラ症(ワイル病)で、コルク栓状の細菌(スピロヘータ)の感染症だ。ネズミの尿を介して感染し、淡水スポーツ(ラフティングなど)をする人がよく発熱し、発熱と頭痛をともなう非特異的な病気を引き起こす。結膜炎(目の充血)がこの感染症確認の手がかりとなる。レプトスピラ症は抗菌薬ドキシサイクリンで治療する。

学術雑誌『Nature Climate Change』にカミロ・モラ、トリスタン・マッケンジーらによる驚くべきインタラクティブなデータが掲載された。気候変動が既知の病原性疾患の60%近くを悪化させる可能性があると指摘している。

上記の感染症のリストは今後数週間のうちに注意しなければならないものの一部だ。気候変動でハリケーンや洪水の頻度や規模が今後さらに増すことが予想されるため、注意すべき感染症は今後さらに増えることが予想される。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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