中国は、自国があれだけ急速に増やしているソーラー電力であっても、それだけでは賄えないことを認識している。中国の原子力発電が着実に成長しているのはそのためだ。過去10年、中国の原子力発電出力の平均年間成長率は16.7%だった。イランを除くどの国よりも高い。その間、中国の原子力発電量は320 TWh増加し、今も21基の原子炉を建設中だ。
世界の原子力発電消費量は過去10年に148TWh増えた。これは中国以外ではこの期間に消費が減ったことを意味している。
どこで原子力発電が伸びているのか? 過去10年間に原子力発電が最速で成長した10カ国を以下のとおりだ。
1. イラン 41.9%(2011~2021年の平均年間成長率)
2. 中国 16.7%
3. パキスタン 14.9%
4. アルゼンチン 5.4%
5. インド 3.1%
6. ロシア 2.5%
7. メキシコ 1.7%
8. チェコ 0.8%
9. ベルギー 0.5%
10. スロバキア 0.2%
全世界の成長率はわずか0.5%だ。米国は今も世界第2位の原子力発電市場であり、世界の29%のシェアを持っているが、過去10年間の原子力発電出力は年間平均0.2%減っている。EUの減少はさらに大きく年間1.3%だ。
EU全体では、主要エネルギー消費の11%を原子力発電に依存している。米国ではその数字は8.0%だ(これは全エネルギー消費に対する割合)。対して、アジア太平洋という、世界の炭素排出量の大半に寄与している地域では、主要エネルギー消費に対する原子力発電の依存率はわずか2.4%だ。
果たしてアジア太平洋地域は、大量の新たなエネルギー需要に応える再生可能エネルギーを開発し続けることはできるか? この地域における総エネルギー需要の急成長ぶりを踏まえると、再生可能エネルギーだけで需要を賄うことは考えにくい。これは、近年これらの国々における化石燃料消費が大幅に増加したことを意味している。
途上地域の原子力発電が増えれば、二酸化炭素排出量を急増させることなく、そこの国々の成長するエネルギー需要に応えることができる。しかし、そのために世界は安全な原子炉の設計と、効果的な廃棄物処理の方法と、今以上の政治的支援を必要としている。
安全な原子力発電技術に関して私がエネルギー省キャサリン・ハフ博士と話した記事はこちら。
「原子力発電の安全な未来を確保する方法」を米エネルギー省の博士に聞く」
(forbes.com 原文)