VCの競争環境をつくり出す
シードの調達にあたっては、VCの横比較も行ったという。出資を持ちかけてきた投資家それぞれに企業価値を算出してもらい、リージョナルフィッシュに対しどのような支援が可能かを相見積もりのような形で示してもらった。
「競争環境をつくり出しました。魅力的な条件が出やすいことはもちろんですが、競争を勝ち抜いた投資家なら情も入って、僕らの案件を大事にしてくれるのではないかと思ったんです。
向こうは百戦錬磨で、何度も投資交渉をしてきているわけですが、スタートアップ側としては3回経験していれば相当詳しい人になる。普通に考えたら、VCのほうが上手に決まっています。だからこちら側でも相手を横比較するのが必要だと思いました」
9月の資金調達では1口2億円の出資を募集したところ、約40社の手が挙がった。そこからベストパートナーを選定し、投資検討期間も3カ月とスムーズに資金を集めることができたという。
現在、調達資金に加え、マダイとトラフグの販売によっても収益をあげているが、梅川は、技術の本丸が社会実装されるまで耐えるのではなく、途中経過の段階でもマネタイズしていくべきだと梅川は訴える。
「例えばスマート養殖に用いる機器を大企業と一緒に開発しながら、彼らからもお金を出してもらうという方法もあります。医療でも共同研究として収益化させるケースがありますよね。大企業などを巻き込んでいくことができれば、技術も磨かれ、資金も手に入るはずです」
資金繰りに苦労する。そんな定説を覆す成果をあげるリージョナルフィッシュ。彼らの存在は、食だけでなくディープテックの未来にも価値ある影響をもたらしそうだ。