インサイドセールスとは、非対面でリード(見込み客)を案件化して営業担当に橋渡しする役割。さらに、マーケティングで獲得した見込み客に対応するインバウンドのSDR(※1)と、企業側からターゲットを選定してアウトバウンドでアプローチするBDR(※2)に大別できる。どちらも電話やメール、オンライン会議など非対面のコミュニケーションで商談機会を創出して、案件化したらフィールドセールスへと引き継いでいく。
その特徴から、インサイドセールスを従来のテレアポの延長ととらえる人がいるかもしれないが「テレアポとは本質的に違う」と茂野明彦は指摘する。
「デジタルツールを使うかどうかは関係ありません。本質的な違いは、フロー型かストック型か。従来のテレアポは、電話番号リストを使い捨てで消費していくフロー型。だから電話をかけるほうも受けるほうも嫌な気持ちになり、職種としても人気がなかった。一方、インサイドセールスは顧客の情報や信頼を積み上げていくストック型。売り手と買い手で気持ちのいいコミュニケーションが成立するのです」
なぜ、近年インサイドセールスへのシフトが加速したのか。考えられる背景はさまざまだ。
デジタルリテラシーが高いミレニアル世代が企業で決裁者のポジションに就き始め、事前に情報収集や検討を進めてから売り手にコンタクトを取る購買行動がB to Bの世界でも広がってきたこと。見込み客獲得からクロージングまでやる「先発完投型」の営業では、月末にクロージングが集中してほかの活動がストップしてしまうこと。導入費用を抑えたサブスク型のビジネスモデルが広がり、対面営業のコストが利益に見合わなくなってきたこと。そして、何よりコロナ禍で対面営業が難しくなったこと──。
これらの要因が複合的に重なって、見込み客に情報提供を行う専門組織としてインサイドセールスが浮上してきた。ただ、現状の課題を解決するだけでは革命的と言えない。インサイドセールスが真にイノベーティブなのは、営業の世界に2つの大きな変化をもたらしたからだ。
「営業は自分で商談を獲得する必要がなくなり、失注した案件の継続的なフォローはインサイドセールスに任せるようになりました。業務負担が軽くなったことで、営業は目の前の顧客に集中できる。現実に起きた課題を解決するソリューション営業から、将来に向けてインサイトを与える営業ができるようになった」(茂野)
これは、インサイドセールスが営業をアシストした結果としての間接的な革命だが、インサイドセールス自身が新たに顧客にもたらした価値もある。
「インサイドセールスは営業に比べて担当する顧客数が多く、もっている情報の幅が広い。しかも対面の商談を調整する必要がないので、顧客がほしいタイミングで情報提供ができる。専門組織化したことで、情報とスピードは格段に向上しています」