ビジネス

2022.10.05 15:00

インサイドセールス人気でわかる、営業スタイルの最前線

Forbes JAPAN編集部
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トップのコミットメントが成否を分ける


インサイドセールスを導入する企業は増えてきたが、うまくいっている企業とそうでない企業がある。

「インサイドセールスの立ち上げは、セールスプロセスを組み替えることと同義です。前工程のマーケティング、後工程の営業やカスタマー部門とどのように協業してセールスのプロセスを再設計するか。設計者となるインサイドセールス部門の責任者が他部門と連携しながら設計しないと、全体最適にならずに失敗しやすい」(茂野)

プロジェクトオーナーの役割も重要だ。インサイドセールス部門の責任者が兼ねるケースもあるが、茂野は自らの経験を振り返り、「できればトップや役員が務めるべき」と指摘する。

「ビズリーチでインサイドセールス部門を立ち上げたときは、社長の多田(洋祐)が全社に向けて『セールス組織を変える』と宣言してくれたおかげで設計者の私は動きやすくなったのです」

営業の世界を変えたインサイドセールスだが、このまま定着するのか、それともさらなる進化を遂げるのか。

「問い合わせ対応型のSDRは、チャットボットなどの発達によって人が介在する必然性が薄れていくでしょう。企業サイトのLP(ランディングページ)に商談可能スケジュールが表示されていて、クリックすれば商談が決まる機能なども普及してきました。ただ、失注した顧客や既存客との関係構築でSDRが活躍する余地は大きい。今後は問い合わせリードよりも、コミュニティから生まれる紹介リードの商談化に注力するようになるのでは」

インサイドセールスの本質がストック型であることを考えると、このトレンド予測は納得だ。一方、BDRについては専門化が進むという見立てである。

「業種や業態、企業規模によって顧客のニーズは異なります。顧客にインサイトを与えるには、それぞれのニーズを理解したうえでコミュニケーションを取らなくてはいけません。今後は『〇〇業界担当のBDR』というように組織や担当を分けて、より専門的になっていくと予想しています」

インサイドセールスの進化は現在進行形。先を見据えてバージョンアップを続ける必要があるだろう。

※1 SDR 営業における開発担当者(Sales Development Representative)の略称。インバウンドの(外から中に入ってくる)顧客を主体に新規開拓を行うインサイドセールスチームのこと。反響型営業。

※2 BDR 事業への開発担当者(Business Development Representative)の略称。大手企業を中心に、アウトバウンドで(自分たちから外に出ていく)新規開拓の役割を担うインサイドセールスチームのこと。新規法人営業。


茂野明彦◎ビズリーチHRMOS事業部インサイドセールス部長。2012年セールスフォース・ドットコム(現セールスフォース・ジャパン)入社。グローバルで初となるインサイドセールス企画トレーニング部門を立ち上げる。16年ビズリーチ入社。インサイドセールス部門の立ち上げ、ビジネスマーケティング部部長を経て現職。

文=村上 敬 写真=有高唯之 編集=神吉弘邦

この記事は 「Forbes JAPAN No.095 2022年月7号(2022/5/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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