そこで、ワイキキビーチの一部を順に封鎖しながら、砂を人工的に補充して砂浜を拡張する「ワイキキビーチ・メンテナンスプロジェクト」が定期的に行われている。現在では、生態系に配慮して、ワイキキビーチから約300メートル沖の海底から砂を回収。これを砂浜に運びこむ方法がとられている。
直近では、2021年5月に350万ドル(約5億円)をかけたメンテナンスプロジェクトが行われた。だが、完了したわずか1カ月後には、高潮によりすぐにプロジェクト実行前の姿に戻ってしまったと報じられた。大金と時間をかけて行っているプロジェクトの成果が、あっけなく帳消しにされるほど、浸食のペースがこれまで以上に速まってきている可能性がある。
今後30年で4割のビーチが消失する研究結果
実際、ハワイ大学海洋地球科学部が2020年に発表した研究によると、海面上昇のスピードが速まり、今後30年間で海面が10インチ(約25センチメートル)近く上昇する可能性もあるという。そうなれば、島のあちこちの砂浜の幅が狭まり、海岸沿いぎりぎりの位置に建てられている建物は崩壊するリスクが高まるだろう。ハワイ大学では、2050年までに、ハワイのビーチのうちおよそ4割が消失する可能性があると述べている。
地球温暖化による海面上昇は、もう避けられる問題ではない。世界の平均気温は右肩上がりで、仮に気温の上昇率が緩やかになったとしても、海面が今より上昇せずに済むことはないと考えられる。同研究チームは、ビーチを管理するための現存の法律は機能していないと指摘。海岸線沿いにある住宅を内陸側に移動させ、さらに海岸線の生態系を守るための州政府による長期的なプログラムを求めている。
海面上昇は世界中で喫緊の問題として持ち上がっているが、ハワイのような小さな島ではそのリスクはさらに高まる。ここに暮らす住民も、世界中から訪れる旅行客も、快適かつ安全に島での時間を楽しめるように、早急な対応が必要であることは間違いない。
連載:ハワイ経済・観光の今