1851年、当時29歳だった彼は、このメゾンを設立し、翌年に渡米。当時のアメリカは、ヨーロッパからみると未開拓の地であったが、自由な精神を持つ彼はそこに目をつけ、シャンパーニュを初めてアメリカに売りこんだ。
アメリカでは、社交の場に赴き、自身のシャンパーニュを披露し、知名度を上げていった。そして評判を呼んだそのシャンパーニュは、多くの賞を受賞し、英王室を始め各国の王室の御用達となる。彼自身も、大胆な行動力と魅力的な人柄から“粋なジェントルマン”として注目を集め、映画や歌のモデルになった。
「Champagne Charlie」の復活
このように独自のストーリーを持つシャルル・エドシックだが、創業者の精神は今でも、シャンパーニュ1本1本に注がれている。中でも、その魂を体現したのが、今年、創業者の生誕200周年を記念して復活した、その名も「シャンパン・チャーリー(Champagne Charlie)」だ。
今年発売となった6ヴィンテージ目となる「Champagne Charlie」
「シャンパン・チャーリー」は、1979年ヴィンテージをデビュー作として、計5ヴィンテージがリリースされたが、その後生産中止となった。その伝説的なシャンパーニュの復活は、縁深いアメリカ市場をはじめ、関係者の間で心待ちにされていた。
今年新たにリリースされた「シャンパン・チャーリー」は、現社長のステファン・ルルー氏と醸造責任者のシリル・ブラン氏が二人三脚で長い時間をかけて準備してきたもので、2016年のワインをベースに、長期熟成されたリザーヴワインが80%という高い比率でブレンドされた異例の作品だ。
シャルル・エドシック社長のステファン・ルルー氏
長い熟成期間が品質の鍵
シャルル・エドシックのシャンパーニュの特徴は、長い時間を経て完成すること。その長期間の熟成に欠かせないのが、クレイエールと言われるシャンパーニュ地方特有の石灰質でできた地下セラーだ。
先見の明があった創業者は、1867年、アメリカからフランスに戻った後、ガロ=ロマン時代の遺産でかつての採石場であった、2000年の歴史を持つクレイエールを購入した。地下30メートルに広がるクレイエールは、気温は約10度で、安定した湿度が常時保たれていて、ワインの熟成に理想的な条件が整っている。今でも、シャルル・エドシックのすべてのシャンパーニュは、このクレイエールで静かに熟成され、世に出る時を待つ。
醸造責任者のシリル・ブラン氏。シャルル・エドシックのボトルの形状は、クレイエールのシルエットから来ている。