日本の英国大使館に贈られた多くの献花が示したもの
日本人が敬意を払うのもこの部分だろう。日本が天皇の象徴性を重視していることを考えればもっともだ。だから私は、日本の英国大使館に贈られた多くの献花を見ても、旧知の日本人から個人的に哀悼の言葉が届いても驚かなかった。象徴天皇を持ち、数年前に皇位継承を経験したばかりの日本人は、君主の死が国民感情や自国への意識、国の将来に関わる問題にどれほど影響するかを、おそらく世界で最も理解している。
また、日本人には華やかな儀式を好み、地位の高い者にほど強い敬意を示す性質もある。日本人自身も、天皇や皇后の多大な重圧や、重すぎる肩書きに伴う献身や犠牲については、雅子皇后の受けた苦労を通して実感している。英国にも、義務感や自己献身や厳格な規則によって生まれた王室の犠牲者を連想する者は増えるだろう。
ただし、自分の利益よりも集団の利益を優先するのは、日本人ならではである。個を最優先にする英国人はそんな行動を滅多にとらないし、ある種の政治家はなおさらだ。
英国は、物価高騰などの差し迫った難題に直面している。国内の悲嘆の一部は、求められる資質を兼ね備えた人物が、一番必要な時期にこの世を去った点にも、おそらく向けられている。
セーラ・パーソンズ(Sarah Parsons)◎イースト・ウェスト・インターフェイス常務取締役、日本における異文化コミュニケーション・ビジネスの第一人者、ジェンダー専門家。日本、韓国、中国企業で、企業向け研修、コンサルティング、講義を実施している。