プロジェクトを始める前は、ダークホースたちに共通しているのは社会の既存システムに逆らうような反骨精神であったり、他者に否定や拒絶されることを気にかけない強い精神性といったものなのかと考えていたが、結果として出てきたのはまったく違ったものだった。全員が決まって口にするのは、人生の充実感だとか、いわゆる経済的、社会的に標準化されたものとは異なった「成功」に対する考え方だったのだ。
さらに実用的な発見として、彼らに共通の4つの項目が見つかった。それは自分のモチベーションを知ること、どのように選択するのかを知ること、自分に適した戦略を知ること、そして「人生のゴール」といった長期的な目的地をいったん無視すること。
この4項目は充実した人生を追求するのに有用な分析で、どんな仕事をすることになっても、どこからキャリアを始めたとしても、誰にでも広く通用すると確信している。
小さなモチベーションに気づく
──著書のなかでも自分のなかの「小さなモチベーション」に気づき、耳を傾けることが重要であると詳しく述べている。
自分のモチベーションの本質を理解することが、満たされた人生を送るために不可欠である、という真理がこのプロジェクトで明らかにされた。
社会的には成功を収めているのに、幸福度が低い人たちが現代社会には多くいる。彼らは「成功を目指して努力を重ねればいずれ充足感が得られる」という標準化社会の基本理念を信じて行動しているが、実は真実はまったく逆で、「充足感の追求が、人を成功に導く」のである。
実際の例を見てみよう。マイケル・ブルームバーグのニューヨーク市長選挙戦を成功させ、ホワイトハウスのジョージ・ブッシュ政権から政務担当職のオファーを受けるまでのキャリアを築いたコリン・べロックは、政治の世界で誰もがうらやむような機会を得ていたにもかかわらず、ジョブオファーをすべて断った。
休暇中にクローゼットを整理しているとき、彼女が本当に情熱を感じられること、それは物事を取り仕切ったり、整理・オーガナイズすること自体だと気づいたからだ。その後彼女はプロの整理・収納コンサルタントとして瞬く間にマンハッタンで成功を収め、フロリダに新しい支店もオープンするなど、自分が本当に充足を感じる仕事で社会的に成功を収めている。
また、モノを「正確に配列させる」ことに強い欲求をもっているソール・シャビロの例も面白い。彼ははじめ、光ファイバーの技師としてミクロン単位の精密さが要求される作業をこなし、商品開発を成功させた。しかし自分より給料をもらっているマネジャー陣を見て、収入増と会社での権力が欲しくなってしまった。
そこで彼はMBAに相当する資格を取得、中間管理職として複数の科学技術系の会社で働いたが、結局苦労が多い割には充足感のない毎日を過ごすことになったのだ。