こうした状況に、小売店側は武装警備の強化で対応しようとしている。
アイオワ州を中心に285店舗を展開するスーパーチェーン「ハイビー」は昨年12月、武装警備員を増やすことを明らかにした。同社が公開した説明動画には、黒い制服を着て、銃や手錠、催涙スプレーなどを携行した警備員が店内を巡回する様子が映っている。ハイビーによれば、特定の事件をきっかけとした措置ではなく、全米で小売店での窃盗が増加している状況を受けた対応だという。
別のスーパーチェーン「ショップライト」は、パンデミックの初期に外出制限などに備えて買いだめする客が押し寄せたため、一部の店舗で武装警備員を増やした。警備員は入り口に常駐し、店内の巡回などにもあたった。
店舗の現場で働く従業員からも、警備体制の強化を訴える声が上がり始めている。たとえばコロラド州では、労働組合員らがスーパーの「アルバートソンズ」と「クローガー」の店舗に武装警備員を置くよう働きかけている。また、一部のスターバックスの店舗でも従業員側が警備員の配置を求めている。
一般に店舗スタッフは、身の安全のため窃盗犯らに直接立ち向かわないよう指示されている。ただ、家電量販大手ベストバイのコリー・バリー最高経営責任者(CEO)は昨年、店舗での盗難の増加は従業員の採用や維持も難しくしかねないと懸念を示している。
警備会社には依頼が殺到しているもようだ。UFIセキュリティーで販売・マーケティング部門を統括するショーン・ミーアンによると、警備強化に関する小売店側からの問い合わせは過去1年に50%強増えたという。
ただ、武装警備員は免許を取得する必要があり、軍や警察での勤務経験も求められることから、給与は高くなる傾向にある。折からの労働力不足も重なり、こうした警備員への需要を満たすのはさらに難しくなっており、警備会社側は賃金の引き上げやボーナスの提示などによる人材誘致に躍起になっている。
(forbes.com 原文)