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2022.09.21 12:00

日本の起業家には、グローバルレベルの「ナラティブづくり」が必要だ


長谷川:私はモデルの仕事をしていた20歳の時に、大手アパレル会社をSNSで批判したことがあります。その時、同業者の友人や広告代理店の知人から「芸能の仕事で食べていきたいのなら、絶対に批判なんてしてはいけない」と、たくさんメッセージが送られてきました。でも、当時かなり尖っていた私は、「そんな理由で仕事がもらえないのならこっちからお断りだ!」と、発信を続けたんです。

今振り返ると、あれは大きな挑戦だったかなと思います。ロンドンでは自分の意見を言うことや議論をすることは当たり前のことでしたが、日本ではストレートに意見を言うと炎上してしまいます。


モデルでjam CEOの長谷川ミラ

だから帰国後は、自分の感情や意見を全面に出すのではなく、統計データや実際の状況などの“ファクト”を並べて発信するように心がけていました。でも今はそれも少しずつ変わってきて、自分の意見をなるべくストレートに発信するようしています。若い人たちにも考えてもらい、自分の意見を持ってもらいたいからです。

若い人たちに社会問題に対する意識がなかなか広がっていかないのは、専門家の方々の話に耳を傾けたり、情熱を感じたりする機会が少ないからではないかと思っています。

だから自分は専門家と若い人たちをつなぐ「仲介人」のような立場になりたい。そう思って活動しています。

岩本:僕は茶道の家元の家系でも、実家がお茶屋さんでもありません。子どものころに見たドラマに出ている茶人がすごくカッコよかったので、茶道に入門して修行を始めました。

お茶の単価も、茶道人口も下がるばかりで、伸びているのはペットボトルのお茶ばかり。お茶を好きになればなるほど、お茶が社会で適切に評価されていないことが悔しくて。なんとかお茶を産業化したいと思い、2018年にTeaRoomを起業しました。お茶のプロデュースや製品開発、飲食店への卸事業やコンサルティング業務などを手がける会社です。


TeaRoom代表取締役CEOの岩本 涼

ただ、実際に動いてみると、自分の正義と社会の正義がまったく違っていました。お茶農家さんには、地元コミュニティの運営システムや意思決定プロセスがあるわけで、それが「現地」の正義。一方、起業家としての自分は、効率的に短期的な成果を出すことが正義でした。

皆さんを巻き込んで産業化していくには、自分の正義を押し付けるのではなく、それぞれの地域の方々と対話をしながら、長期的な視点で共に正義をつくっていかなければいけない。そう理解した瞬間が、僕のチャレンジの始まりだったと思います。

お茶農家さんには、茶の文化の知識はあまりありません。一方で、茶道の先生方にも日本茶の産業の知識はあまりない。だからこそ、文化と産業を掛け合わせることで、新しい産業が生まれるのではないかと考えて活動しています。

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文=久野照美 撮影=You Ishii

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