もともと賃金が低く、週末などに休みが取れないなど福利厚生の面でも厳しい飲食業界の待遇に加え、コロナ禍で不安定な雇用に懸念を示す人が増えたものと考えられる。そのため、レストラン経営者は厨房スタッフの人員確保のために、賃金アップや福利厚生の充実を検討せざるを得ないのだ。
上述のジッピーズでは、キッチンフィーを導入せずに対応できる方法も模索したというが、インフレによってエネルギーコストと食材のコストも高騰しており、社内でまかなうことができないと判断したという。
ハワイ州では9月から、使い捨てプラスチック製品の使用が禁止され、持ち帰り客用容器のコストも高くなる。さらに、ハワイ州では今後、最低賃金の引き上げが決まっており、従業員の人件費もさらに増えることがわかっている。店側が負うコストを考えると、キッチンフィーの導入はやむを得なかったと見える。
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戸惑い・反発の声が大半か
これまでなかったキッチンフィーの存在。インフレであらゆるものの値段が上がっているなか、チップとは別にさらなる別の料金がかかるとなり、消費者の反応も敏感だ。キッチンフィーに関するツイートには、次のようなコメントが寄せられている。
「なんてこった。従業員に必要な給料を払い、それに応じてメニューに値段をつければいいだけだ」
「そんなものはお断り。その分のお金で、食材を買って家で料理を作る」
「初めて聞いた話だ!」
「次は、コップに水を注ぐ料金、トイレをきれいに保つ料金、食器を洗う料金がやってくるか?」
キッチンフィーを導入するより、「店が従業員に十分な給料を支払えるように価格設定をするべきだ」という否定的な意見が多いが、一方で「レストランの裏方で汗を流している人々にお金がいくというアイデアが、気に入った」などと、キッチンフィーに理解を示す声もある。
賛否両論に分かれるなか、レストラン経営者は、従業員を確保するために頭を悩ませる日々が続きそうだ。
連載:ハワイ経済・観光の今