ボタン電池の事故から子どもたちを守る米国の新法

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ボタン電池はテレビのリモコン、玩具、クルマのキー、腕時計、カメラなどに数多く使われるようになっている。サイズがレーズンくらいの小さなものから100円硬貨くらいのものまであるこの小さな銀色の物体が、小さな子どもに怪我をさせたり、ときには命を奪う危険をはらんでいる。

ピカピカしたコインのような円盤は幼児にとって魅力的なので、床に落ちていたり、おもちゃの電池ボックスから外れそうになっているのを見つけた幼児は、すぐ手に取ってしまう。よちよち歩きの幼児たちは好奇心旺盛で、あらゆる物を鼻や耳や口に入れることでよく知られている。この滑りやすい小さな円盤は体のあらゆる開口部に入ることになりかねない。コインを飲み込むという少々危険だが「おもしろい」パーティーの余興は幼児もやりたがり、かなり厄介な問題であり驚くほどよく起きる。しかし、電池はコインと異なり、それ自身に深刻な損傷をおよぼす力がある。

雑誌『Pediatrics』に掲載された論文によると、ボタン電池などの異物の誤飲は、中毒事故管理センターにかかってくる5歳以下の小児の事故に関する電話の中で4番目に多い原因だ。ボタン電池を飲み込んだ時に最も損傷を受けるのが食道で、電池はしばしば食道の途中に留まって症状を悪化させる。もっと小さなボタン電池であっても有害であり、1歳未満の乳児では特にそうだ。

濡れた組織に電池が触れたために起きる電流は、水分子を水酸イオンに分解する。このイオンは危険なほど高いpH(酸性ではなくアルカリ性)を示し、回復不能な組織損傷を起こしかねない。損傷は、電池が完全に飲み込まれて胃(酸性のpHが危険な水酸イオンを中和するのに役立つ)に到達するか、切開手術で取り除かれた後もしばらく継続する。損傷は誤飲から1~2時間後に始まる。どんなサイズであれ子どもが電池を飲み込んだと思ったら、直ちに医師の診察を受けるべきである。大きい電池は、首または頸部または胸部レントゲンで容易に見ることができる。


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耳や鼻に入った電池にも緊急の対応が必要だ。なぜなら数時間以内に、外耳道や鼓膜、中耳構造に重大な損傷を与える可能性があるからだ。鼻中組織や鼻中隔にも重大な損傷を与える場合がある。緊急な摘出が必要だ。

1歳以上の子どもが電池を飲み込んだ時は、スプーン1杯のはちみつを飲ませる(ただし緊急治療室への移動を遅らせないこと)ことで、電池の表面に膜を作り損傷を軽減できる可能性がある。ただし、1歳未満の乳児にはどんな形でもはちみつを与えてはいけない。一部のはちみつ製品に含まれているボツリヌス菌という細菌が原因で起こる稀な感染症への耐性を持たないためだ。
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翻訳=高橋信夫

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