コロナ後遺症で働けない米労働者、失われた賃金は年30兆円超か

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新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより、米国ではこの数年間、労働力が大幅に減少している。その理由には、保育所の不足や感染への不安、過酷な労働条件や賃金引き下げの拒否、燃え尽き症候群、一部の産業におけるメンタルヘルスの問題の増大など、さまざまなものがある。

米シンクタンク、ブルッキングス研究所が新たに発表した報告書によると、新型コロナウイルスの後遺症のために仕事に戻ることができずにいる人は、およそ400万人にのぼるとみられる。失われた賃金は、年間およそ1700億〜2300億ドル(約24兆〜33兆円)と推計され、生活費が高騰する現在、経済的負担もさらに大きくなっていると考えられる。

この報告書は、国勢調査局が6月に実施した家計実態調査で集められた最新のデータに基づくものだ。調査では新たに、新型コロナウイルス感染症の後遺症とその影響がどの程度広まっているか調べるための4つの質問が加えられた。そして、この調査の結果、米国では生産年齢人口の約8%にあたる約1630万人が後遺症に悩まされていることが明らかになっている。

同研究所はさらに、調査結果を裏付けるものとして、その他の機関による調査の結果も示している。その一つは、ミネアポリス連邦準備銀行が発表した「感染後も3カ月以上にわたって症状が続いている人は24.1%」というものだ。

また、米疾病対策センター(CDC)によると、米国人の約70%はすでに新型コロナウイルスに感染したとみられており、この割合から考えると、生産年齢人口の米国人の約3400万人が後遺症を経験していることになるという。回答者の50%が後遺症から回復したと報告していることから、現在も後遺症が続いている人は、約1700万人にのぼる可能性があるとみられている。

英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンと米コロンビア長老派教会ワイルコーネル医療センターなどの研究者が主導した感染者を対象とするオンラインアンケートに基づく調査の結果(昨年7月に発表)では、後遺症が続いている人のうち、感染前と同じ労働時間で仕事を続けていた人は約27%、まったく働けない状態の人はおよそ23%だった。
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編集=木内涼子

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