アルゼンチンのトゥクマン市では、今まさに「謎の肺炎」と呼べる病気が発生している。これまでに報告された10件の肺炎の原因が不明なので「謎」なのだ。今回の流行では、すでに3人の死者が出ていることから「謎の肺炎」という言葉の頭に「致死性の」という言葉を加えることもできるかもしれない。
この事態にWHO(世界保健機関)の南北アメリカ大陸事務所であるPAHO(汎米保健機構)が注目したのは当然だろう。PAHO / WHOは現在、アルゼンチンで起こっていることについて誰が、何を、いつ、どこで、なぜそうなったのかを把握するために、この感染症の発生を監視している。
これを「原因不明の肺炎症例群」と呼んでいるPAHO/WHOのツイートは以下のものとなる。
The Pan American Health Organization (PAHO) is in contact with the Argentina Ministry of Health as they investigate a cluster of cases of pneumonia due to unknown cause in Tucuman Argentina. https://t.co/pvwsHp8962
— PAHO/WHO (@pahowho) September 2, 2022
さて「謎の肺炎」や「原因不明の肺炎」という言葉は、ロマンチックコメディー映画の「I Want You Back(恋人を取り戻すには)」を見た後に誰かの耳元で囁くような甘い言葉ではない。2020年1月に、フォーブスで報告されたときと同様に、これはCOVID-19(新型コロナウィルス感染症)のパンデミックが出現する少し前に、中国の武漢で見られた現象を表現するために用いられた言葉だ。
ただし「謎の肺炎」がそのままパンデミック(世界的大流行)を意味するわけではないことは、肝に命じておいてほしい。もちろんそのままエピデミック(地域内での大流行)を意味するわけでもない。それどころか、これらの肺炎の原因となっているものが何にせよ、さらに広がるとは限らない。しかし、謎の肺炎患者が発生した場合には、直ちに注意を払う必要がある。
これまでに報告された10件の症例については、あまり詳しいことはわかっていない。そうでなければ「ああ、あの肺炎か」とか「原因がよくわかっている肺炎だ」とかいわれているはずだろう。米国時間9月2日のPAHOの発表によれば「予備検査では、最も一般的なウイルス、細菌、真菌は検出されなかった。検体には現在、さらなる分析が行われている」という。アルゼンチンのNational Administration of Laboratories and Health Institutes(国立衛生研究所。スペイン語の頭文字をとってANLISと呼ばれている)で、より高度な検査を行えば、はっきとした病原体が見つかる可能性はある。