多くの場所にシトロエン・エンブレムのモチーフが使われていて、シートのデザインやステッチのニュアンスも品があるので、こういうフランス流の高級感と座り心地は気持ちが良い。すべてのシートはシトロエン独自の「アドバンストコンフォートシート」ということで、座り心地が良く、なんと伝説の「DS」(1955年式)のふかふかとしたクッションを意識して作ったという。歴史があることはいいことだ。
リアのシートでは、レグルームやヘッドルームはたっぷりで、居心地がいい。後部席からラゲージスペースにスルーがあるので、スノボみたいな長細いものも楽に入れられる。ただ、サンルーフはスイッチを押せば自動的に開くけど、そのカバーは手動なので、ドライバーが後ろに左手を伸ばして締めることになるのは、少し面倒かな。
さて、走りはどうか。
これは、1598cc直列4気筒ガソリンターボ・エンジンを搭載した前輪駆動モデルだ。最高出力は180ps、最大トルクは250Nmということなので、加速性は十分と言える。それに8段オートマチック変速機を組み合わせるので、シフトはスムーズだし、ショックを感じない。
低速からのパワーも、1.6リッターから想像するより、はるかに力強い。どの速度域からもアクセルペダルを強く踏み込むことなく、しっかり加速してくれる。そんなに凝ったエンジンではないと思うけれど、ストレスはない。
しかし、今回一番感心したのは、乗り心地だね。サスペンション形式は、前がマクファーソンストラット、後ろがトーションビームになっているので、特別なセッティングにはなっていないにしても、じつに気持がいい。うねりの吸収の仕方、コーナーに入った時のボディロール、段差を超えた直後の車体の座り、全てが安定している。
ひとつだけ気になった部分があった。走りはキビキビしているし、コーナリングは安定しているけど、アクセル・ペダルは多少敏感に感じた。例えば、BMWかメルセデスからC5Xに乗り換えると、ペダル操作の慣れが必要だと思った。
シトロエン車の好きな人、あるいはフランス車への乗り換えを検討している人には、すぐに試乗して欲しい。まるでぴったりと自分の体に合うイブ・サンローランみたいなスーツやドレスのように、このスタイルング、走り、乗り心地、質感、そして480万円というプライスは、うれしく受け入れられる。
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