就活戦線で見えてきたホワイト企業の「入社困難時代」

Avalon Consultingの竹内健登社長


ケース課題は例えば次のような問題を3分ほどで解かなければならない。

〈あるラーメン店の売上を推定し、その売上を上げる方法を考えて下さい。ラーメン店の立地は東京都にあるJR新宿駅の東口付近とします〉

正解があるわけではなく、席数を増やすとかドミナント戦略を取るなど、思考法を問う。社会人ですら解けないものを社会経験がない学生が解けるのか疑問だが、「この10年、年々、求める能力は上がっていて、経済状況の変化と連動しています」と言う。

「社会が高度化して、IT技術や課題解決が仕事の中心になっています。自分で考えて、実行に移せるかが問われる。こうした能力の高度化は例えば銀行を例にとるとわかりやすい。窓口業務やリテール営業よりも企業向けの大きな融資ができる財務知識が求められるようになり、企業は『少人数で効率よく回す』ことを目指す」

一方で、学生に人気があるのは、転勤と残業がなく、非営業職である。文系では、企画、総務、人事、広報、マーケッターだ。しかし、こうした職種は採用人数が少ないため、より狭き門になっている。

竹内氏はこう言う。「ホワイトアカデミーの卒業生で希望する大手企業に入った卒業生600人のうち、早期退社した人はいません。 それは入社する大変さをよくわかっているからです。会社に入ってから、ここで学んだビジネス素養の価値がわかる。一方で、いい企業に入っても退職する人というのは、上司との人間関係か転職によるステップアップです。あるいは、何でも人のせいにする他責の人。これはマインドの問題であり、エンプロイアビリティも教育しています」

竹内氏が警告するのは、「非正社員を増やした企業ランキング」だ。ユニクロのファーストリテイリングやドン・キホーテなど小売りが非正規社員を増やすのは単純に店舗で働く人がもともと多いため非正社員を毎年多く採用しているからだが、意外だったのは商社やメーカーが非正社員を増やしていることだ。

その理由は、一般職を派遣社員に切り替えているからだという。つまり、前述したように、少人数で効率よく回すことが目標とされているため、待遇や環境がよい「ホワイト企業」ほど入社はより難しくなっているのだ。

待遇のよい大企業を狙うことがこれだけ難しくなっているのだから、今こそ、「本当にやりたいことはなにか」を問うことがもっとも重要な、「あるべき時代」になっているのかもしれない。

文=Forbes JAPAN編集部 写真=​​太田隆生​​

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