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2022.09.06 08:30

17カ国でバズる理由 予想を絶えず更新する「マッピング思考」とは

『マッピング思考 人には見えていないことが見えてくる「メタ論理トレーニング」』(ジュリア・ガレフ著、児島修訳、東洋経済新報社、2022年8月刊)

『マッピング思考 人には見えていないことが見えてくる「メタ論理トレーニング」』(ジュリア・ガレフ著、児島修訳、東洋経済新報社、2022年8月刊)

出版後超速でベストセラーとなり、全世界で17カ国に翻訳された超弩級の話題作がある。

ジュリア・ガレフ著の『The Scout Mindset』だ。

著者が、10年にわたって人気ポッドキャスト「Rationally Speaking(合理的な話し方)」を通じて行った識者へのインタビューをまとめたこの本には、「365日の情報洪水の中で選択ミス・判断ミスを防ぎ、もっとも大切なことに集中する方法」が書かれているという。

以下、その世界的ベストセラーの待望の日本語版『マッピング思考 人には見えていないことが見えてくる「メタ論理トレーニング」』(ジュリア・ガレフ著、児島修訳、東洋経済新報社、2022年8月刊)から抜粋転載して紹介する。


「間違える力」が超・優秀な人


政治学者のフィリップ・テトロックは、これまで20年近くにわたって「人間が世界のさまざまな出来事を予測する能力」を測定してきた。その研究結果は、人間のこの能力の乏しさをはっきりと物語っていた。

専門家と呼ばれる人たちでさえ、偶然よりわずかにマシな結果しか出せないのだ。

テトロックの有名な言葉を借りれば、専門家の予測も、「チンパンジーのダーツ投げと同じくらいの精度」しかない。

だが例外もあった。「エジプトの選挙でムスリム同胞団が勝利するか」「2013年に南シナ海で武力事件が発生し、1人以上の死者が出るか」などの問題を高い精度で予測できる能力を持った人々が、ごく一部だけいることがわかったのだ。テトロックは彼らを「超予測者(スーパーフォーキャスター)」と名づけた。

アメリカの情報機関である「情報高等研究開発活動(IARPA)」が主催した「予測トーナメント」で、超予測者のチームは一流大学の教授チームに最大70%もの大差をつけて圧勝した。

超予測者の成績があまりにも優れていたため、IARPAが大会開始からわずか2年後に、本来は4チームで争われるはずのトーナメントへの他のチームの参加を中止し、超予測者とCIAの2チームのみを勝負させることにしたくらいだ。

なぜ、超予測者の予測はこれほど優れているのか?

彼らが、他人よりも賢いというわけではない。他人よりも知識や経験が豊富なわけでもない。そのほとんどがアマチュアだ。

それでも、長年の経験と予測対象の機密情報を入手できるという強みを持つCIAのプロのアナリストをもしのぐ予測をする。

グーグル検索だけを武器に、CIAに30%の差をつけて勝利したのだ。

超予測者の予測はなぜこれほどまでに優れているのか? それは、彼らの「間違える能力」が優れているからだ。
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