ライフスタイル

2022.08.28 08:30

攻撃的な認知症高齢者を医療用大麻で抑制、米国での試み


これらの試みは、娯楽目的の大麻使用とは一線を画している。この方法以外では抗精神病薬などの強い薬でしか制御できない症状を何とかしたいという、家族や介護者による試みと言えるだろう。こうした使用例の報告からすると、大麻は確かに高齢者の興奮を抑える一助となるようだ。これらのケースでは、大麻は、ごく少量の抗精神病薬と組み合わせて、毎日使用されている。

こうした家族が共通して抱えている悩みは、厄介で、時には危険でもある高齢者の行動を抑えるためにどれくらいの量の大麻を服用させるべきなのかについて、ガイドラインが存在しないという問題だ。

そのため、家族たちは試行錯誤を繰り返している。まずはCBD(カンナビジオール)と呼ばれる、向精神作用のない大麻成分を数mg、あるいは10~20mg与えてみるところから始める。これで、多少は効果があるが十分ではないという場合、服用量を増やすか、1日に2回以上与えるようにする。

効果が認められない時は、CBDに加えて、向精神作用のある成分THC(テトラヒドロカンナビノール)を組み合わせて試すこともある。家族から私たちに寄せられた非公式の報告によると、こうした高齢者には、CBDとTHCの組み合わせが最も効果があるようだ。

だが、本質的な問題として、こうした結果が認知症高齢者に広く当てはまるものなのか、試してみた人にたまたま運良く効果があっただけなのかを判断するための情報は、全く存在しない。筆者もあらゆる医療関係の文献を探してみたが、大麻をどのように、どのくらいの容量を投与すれば、認知症に関連する興奮を抑えられるのか、明確な結論が得られず、不満だけがつのる状況が続いている。どうやらあらゆる論文が、「この分野ではさらなる研究が必要だ」という同じ結論に達しているようだ。

筆者自身の見解を述べるなら、抗精神病薬や鎮静剤を大量に投与し、高齢者を「薬漬け」にしてしまえば、介護者にとっては扱いやすくなるのは間違いないだろう。だが、このような投薬治療を受けている本人にとっては、生活の質(QOL)は完全に損なわれてしまう。もし、それほど強い薬を投与しなくて済む選択肢があるのなら、試してみるべきだ。今後も研究が続けられ、最終的には、認知症に関連する問題行動を大麻が緩和するメカニズムや、どれだけの効果があるかを把握できるようになるのではないかと、私は期待をかけている。

今のところは根拠となる科学的データは非常に乏しいものの、医療用大麻の使用は、認知症により自分の行動をコントロールできず、興奮状態にある高齢者に寄り添いながらその問題行動を抑えるのに有用な手段のように見受けられる。

翻訳=長谷睦/ガリレオ

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