具体的には、以下のような課題を抱えていないか、自分に問いかけてみよう。
・自らが率いるチームの理解不足にいら立つことが多い。
・扱っている製品やサービスの利点を具体的にアピールしているのに、事業の展開に向けた営業努力が全く実を結ばないことに当惑している。
・同僚やクライアントが、自分のメールを無視し、返答をよこさない。
ビジネス界には、4つの単語でできた金言がある。その意味を理解し、実行に移すだけで、成果を一変させるパワーを持っている。それは、「It’s not about you(大事なのは自分の言い分ではない)」という言葉だ。
人は、誰もが自分と同じように考え、行動し、コミュニケーションするものだと思い込んでしまうことがあまりにも多い。さらに悪いケースでは、オーディエンスのことはそっちのけで、営業トークや、自らの事情を伝えることにばかり力を入れるというミスを犯してしまう。
トップレベルのリーダーは、まずは相手を最優先し、相手の役に立つことを重んじるマインドセットを獲得することの重要性を理解している。それこそが、コミュニケーションや意思疎通を改善し、信頼を築き、関係を深めて事業を成長させる道につながるからだ。
では、この金言を実行に移す上で最も大切な2つの力を養う方法を以下に説明しよう。
1. 共感力を養う
相手に思いやりを示す同情(sympathy)と混同されがちだが、共感(empathy)は、自分を相手の立場に置き、その人の視点から物事を見る行為だ。言い換えれば、「it’s all about them(大事なのは相手の言い分)」と考えるということだ。
共感力の高いリーダーになるには、まずは相手を最優先するよう、マインドセットを切り替える必要がある。相手を、「取引やタスクを完了させるための手段」と考えるのではなく、生身の人間として見るよう心がけよう。
これを顧客に当てはめると、共感の実践とはすなわち、単に商品を売るのではなく、相手の役に立つことを重視した関係を築き上げることだ。また、相手が同僚であれば、良くないと思える部分もできるだけ好意的に判断し、頻繁にコミュニケーションを取ることだろう。他者の立場に身を置くことで、その人のニーズを理解しやすくなる。これは、成功するコミュニケーションの基礎にある発想だ。
次に、相手が言葉に出していない思いや感情を引き出すような、思慮深く鋭い質問を投げかけよう。好奇心が旺盛な人は多くの質問を投げかけるので、周囲の人への理解が深まる。こうした態度を取れば、相手との心の距離も縮まり、より良いつながりを持てるだろう。
最後に、自分について語るのは控えて、相手の話を聞くことを心がけよう。これにより、新たなアイデアの発見が期待できるほか、問題の芽がまだ小さいうちに検知することができる。
ここに、さまざまな視点を考慮するオープンな考え方が加われば、相手は「尊重されている」「意見を聞いてもらえている」と感じる。また、こちらにも、顧客や同僚、パートナーへの理解が深まるというメリットがある。そうなれば、やり取りの中で得た知見を生かして、さらに相手の役に立ち、コミュニケーションを改善できるはずだ。