これを聞いて、「日本は外国人を使い捨てにしている。反省しなければいけない」という声もあったようだし、「米国だって幼児誘拐や不法移民など、問題が山積みだろう。なんで、米国が日本より上になるんだ」と思った人もいたかもしれない。
先日、この釈然としない気持ちをぶつけた日本政府関係者は、にやりと笑って「全世界に自分の価値を押しつける国なんて、米国ぐらいですよ」と語った。
日本では過去、長野県川上村のレタス栽培農家などで働く中国人らが、外国人技能実習制度を隠れ蓑に過酷な労働環境に置かれているとされ、社会問題になった。米国は国務省をトップとした調査団を派遣し、日本の関係省庁に聞き取りを行った。日本政府は「このままでは人身売買国家にされてしまう」と慌て、ブローカーを排除するなどした技能実習適正化法を2017年に施行して切り抜けた。
この政府関係者は「技能実習制度に問題があったのは間違いありません。でも、米国調査団にまるで被告人扱いされたのは、気分の良いものではありませんでした」と話す。
米国はオバマ大統領(当時)が「世界の警察官」役から降りると宣言したものの、こうした「米国流」を押し通す動きは続いている。国務省は毎年、人身売買とは別に世界の国別人権報告書を発表し、そのたびにロシアや中国、シリア、ミャンマーなどが激しく反発している。21年12月には、日本など約110の国・地域を集め、オンラインで「民主主義サミット」を開いた。当時は、「なんでわが国は呼ばれないんだ」とか「呼ばれなくて良かった」などの声が交錯したほか、米国内でも「民主党に配慮したバイデン政権の国内パフォーマンス」という厳しい指摘が出た。
先の、外国人技能実習制度で苦い経験をした政府関係者は「まあ、日本は恵まれてる方ですよ。米国の裏庭にあたる中南米なんて、調査団の派遣なんて生ぬるい方法じゃありませんから」と語る。その典型が1989年末に起きた、米軍によるパナマ侵攻だ。米軍はパナマ軍との交戦の末、指導者のノリエガ将軍を拘束した。ノリエガ将軍は元々、米中央情報局(CIA)の協力者だった。手下が言うことを聞かなくなったので拉致した、とも言える事件だ。