このように大なり小なり、米国は自身の裏庭で問題が起きないよう、「民主主義や人権のために」という名目で中南米諸国に内政干渉を続けた。
最近の中南米では、ペルーやチリなどで左派政権が次々に誕生。南米の親米国家とされるコロンビアですら、8月7日に同国初の左派政権が誕生した。経済問題や長引く内戦などを解決できない既存政権への反発が原因だが、結果的に中南米諸国の米国離れ現象を招いている。
今年6月、ロサンゼルスで開いた米州サミットでは、米国が「民主主義と人権」を理由に、キューバ、ベネズエラ、ニカラグアを招待しなかったことから、メキシコなど8カ国の首脳が参加しない騒ぎに発展した。
また、「民主主義と人権」をうたう米国自身が、自分勝手な行動を取る「ジャイアン」ぶりを発揮している。典型がトランプ政権だった。国連人権理事会や世界保健機関(WHO)、2020年以降の地球温暖化対策を定めたパリ協定、環太平洋経済連携協定(TPP)などから、次々に離脱した。「米国だって自分の国益が第一だ」と言えばそうなのかもしれないが、他の国々からすれば、「それなら、ひとの国の事情に首を突っ込むんじゃないよ」と怒りたくもなる。
この間隙をうまく突いているのがロシア、中国、北朝鮮だ。以前、ニューヨークに出張中、トルコ料理店で取材先とランチをしていると、顔なじみの北朝鮮外交官の姿が見えた。何をしているのかと思ったら、アフリカ系や中東系の外交官たちとランチを取っていた。今、ニューヨークやジュネーブなどでは、こうした「グルーピング」活動が盛んになっているという。
米国ならQUAD(日米豪印安保対話)やAUKUS(米英豪安保枠組み)など、中ロならBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)といった具合だ。そんなか、中ロ両国は「民主主義や人権」を強調しない。日本にとっての技能実習制度がそうだったように、どんな国にも大小の違いこそあれ、「すねの傷」はある。そこを突かない中ロは、居心地の良いパートナーということになる。
民主主義と人権の名の下に結集するという大義は大変結構なことだ。この理想を実現するためにも、米国は「上から目線外交」から早く脱却する必要がある。
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