「おもちゃ箱の中にない」ということは“すべての”子どもたちに対し、「現実の世界にもいなくていいと思わせることだ」とアトキンソンは指摘する。
そうしたアトキンソンの主張は、スコットランドにあるクイーン・マーガレット大学のシアン・ジョーンズ博士(心理学)の論文によって裏付けられている。博士によると、「障害のある子を模した人形で遊んだ子どもたちはわずか3分間後には、障害のある子たちに対してより前向きで、友好的な態度を取るようになった」という。
企業も今こそ見直しを─
BOKUNOの創設者、スズキ・ロウは当初、動物や想像上の生き物のぬいぐるみしか作らなかった。それは、人形の肌の色を決められなかったからだ。英国の少数派(日本人)である彼女にとって、どの人種の人形を優先して作り始めるか、決めるのが難しかったのだという。
そこで選んだのが、ノーム(大地の精霊)だった。性別や年齢を特定しないようにひげをなくし、肌の色は白斑とアルビノ含め、6つのパターンにした。
発売から最初の8カ月ほどは、注文の9割が明るい肌色のノームだった。それについては残念に思っていたというが、その後、世界中に広まった人種差別抗議運動「ブラック・ライブズ・マター」によって、注文の傾向が一変したという。そのころから現在まで、最も人気のある商品はダークカラーの肌のノームだ。
あらゆる子どもたちの姿を表わす人形が存在することの重要性を理解し、求める消費者は増加している。いまこそ企業の側も、そうした変化を商品にどのように反映させていくか、検討すべきときだ。