業界の景気サイクルからこの企業が受ける影響は、最初のうちは、ある1年の売上の伸び率が55%になるか、45%にとどまるか、というレベルでしかない。そして、たとえ45%だったとしても、成熟産業では驚異的に高い成長率だ。
しかし、時が経つと共に、収穫逓減の法則が働くようになる。売上の伸び率は、年率50%から30%へ、20%へと落ち込んでいく(それでも、創業期の成長のおかげで、この企業は、業界全体の中でかなりのシェアを獲得しているだろう)。この時期の成長率は、景気サイクルの影響を受けるものになり、例えば好況期には25%、不況期には15%になるだろう。
こうした数字であっても、少なくとも旧態依然とした企業と比べれば、景気サイクルの影響を大きく受けているとは言えない。だが、市場シェアの伸び率が次第に下がってくるにつれて、この企業においても、売上高の変動が、業界の景気サイクルによって大きく左右されるようになる。現在のメタに訪れているのは、まさにこうした状況だ。
景気サイクルに左右されること自体は、別に悪いことではない。ただし、事業が一時的にせよ停滞するのは、安定した売上が常に得られる状況より望ましいとは言えないだろう。また、急成長を遂げるのはいいことだが、こちらにも、売上高の伸びに利益が伴うなら、という条件がつく。そして、ステージの変化に伴って企業が直面する新たな問題をきちんと把握することが、経営陣の課題となる。
創業間もないテック系企業であれば、成長を実現することが大変重要になる。その時の経済成長率が2%か3%かは、大きな意味を持たない。なぜなら、優れた新製品は、経済の状況にかかわらず、売上を押し上げてくれるからだ。
しかし、景気サイクルの影響を受けるステージに入ると、経営陣は、景気サイクルが持つ意味を真剣に考えなければならない。不況期には、どれだけ収益が下がるだろうか? 支出を抑える必要は生じるだろうか? おそらくはそうなるだろう。
では、経費削減をどのような形で実行に移すべきだろうか? 従業員のレイオフ。マーケティング活動の抑制。設備投資のペースを下げる。あるいは、従業員向けに提供していた「赤ちゃんヤギとのヨガセッション」の廃止を考えるべきだろうか?
一方、景気のサイクルは、悪化するばかりではなく、上向くこともある。さらに、予想外のタイミングで好況が訪れることも多い。経営陣は、状況が最悪という時にこそ、需要増に備えて、対応策を練っておく必要がある。これには、従業員の増員や、設備の増強、拠点の開設、そして、これらすべてを(請求書の支払いを遅れずに)行うための資金調達が必要になる。
成長は歓迎すべきことだ。そして、企業が長きにわたって成長を続けた先には、事業が景気サイクルに左右されるようになる状況が待っている。そこでは、新たなスキルが必要とされる。これは、メタを含め、卓越した構想を持って成功を収めた企業すべてが、いずれ直面する状況なのだ。