彼らの売上高が最近になって減少した原因はそこにあるし、他の多くのテック系企業も、同じ道をたどる可能性が高い。輝かしい急成長を遂げていた新興企業が、気がつくと、景気サイクルに伴って浮き沈みを繰り返す、古くからあるラストベルトの企業のように見えてくる、という流れだ。
広告業は、常に景気サイクルに左右され続けてきた。少なくとも、データが収集されるようになった時期以降についてはそう言える。はるか昔の1919年までさかのぼって見ても、インフレ調整後の総広告費は、不況期を除くと年間5.7%増を記録していたが、不況期に入ると、これが5.6%減にまで落ち込んでいる。
「景気後退の時こそ、企業は積極的に広告を打つべきだ」とは、マーケティング担当者の常套句だが、企業の算盤勘定は、そうした方向には働かない。むしろ、経済が退潮傾向になると広告費用が減ることは、この業界における冷酷で動かしがたい事実だ。
ある企業の市場シェアが大きくなればなるほど、業界の全体的な景気動向から影響される度合いが高まっていく。また、企業の勢いは、次第に売上成長に反映されなくなっていく。このことは、アマゾンのネット通販部門が、2022年第2四半期に売上高の減少を記録したことについても当てはまるだろう。
今後はテスラも、同様の傾向を示すはずだ。同社が今後、ゼネラルモーターズ(GM)やトヨタ並みの市場シェアを獲得した場合、これまでのような勢いでシェアを増やすことはできなくなり、自動車業界全体の景気サイクルに従った浮き沈みを経験するようになるだろう。
鉄鋼や自動車、製紙など、大規模で、景気サイクルに左右される傾向が非常に強い業界について考えてみよう。そしてここに、既存の企業よりも優れた経営体制や技術を持つ、小規模な企業が生まれたとしよう。
当初は、この企業のシェアは、業界全体のうち1%という、わずかな割合にとどまっているが、売上は年率50%で成長する。この企業は、景気の波に左右されないように見えるだろう。売上は、この会社が自社の成長を妨げている障害にどう対処するか、いかに画期的な新機軸を打ち出してさらに顧客を獲得するか、という点を反映して伸びるからだ。