今回、シリコンバレーの暗号資産業界に身を置く筆者と、日本で暗号資産業界をリードするSBI VCトレード常務取締役近藤智彦氏が日米の業界動向や未来について語った。2回にまたがる対談の前編では、クリプト・ウィンターを迎えた日米の現在、暗号資産業界の未来を左右する法規制について語り合った。
後編では、暗号資産の“真の価値”や、Web3のユースケースと人材の台頭、暗号資産業界のさらなる成長を促すカギとなる法制度についてのディスカッションをお届けしたい。
吉川絵美(以下、吉川):暗号資産というと投機的な側面が注目されることが多いですが、ここ数年で、実用的なユースケースも広がっています。Ripple(リップル)では、「価値のインターネット」をミッションとして事業を進めていて、最も摩擦が多い国際送金にまずは着目してきました。暗号資産「XRP」をブリッジ通貨として活用したODL(オンデマンド流動性)では、金融機関を通したリアルタイムの国際送金を実現しています。
近藤智彦(以下、近藤):ODLに関しては、SBI VCトレードでもいち早く着目しました。顧客の資産運用に加えて、暗号資産取引インフラを金融機関向けの新たな金融インフラとして積極活用したいという考えから提携に至りました。
暗号資産を活用した国際送金としては日本で初めての試みで、昨年7月にリリースしました。また、直近では日本における複数の資金移動業者、送金先を複数接続可能なマルチテナント型のシステムにアップグレードを行い、送金先の国・地域の拡大につとめています。
吉川:日本でも高齢化が進んでいることもあり、これから引き続き海外労働者が増えていくでしょう。彼らが故郷に送金する際に、これまで決済に数日、そして数千円ものコストがかかっていました。ブロックチェーンを活用した国際送金を利用することで安価に確実に送金できるようになりました。これは社会にとっても大きな意義のあることだと思います。
近藤:そうですね。ODL正式開始前の本番テストの際に初めてフィリピンにXRPが送られた時は、社内でみんなが盛り上がったのをよく覚えております。
吉川:このようにブロックチェーンによる新たな金融インフラは引き続き成熟していくと思いますが、一方で、リテールにおいても“クリプト人口”を増やすためのさまざまな試みが活発です。米国をはじめとして海外では、「クリプト・リワード」のコンセプトが注目を集めています。例えばBlockFi(ブロックファイ)やGemini(ジェミナイ)といった暗号資産企業が、ビットコインが利用額に応じてたまるクレジットカードを相次いでリリースし、特に若年層の間で大人気です。
クリプト・リワードはクリプト人口を増やす一つの手段として業界でも注目されています。また、クリプト・リワードを得るためにクレジットカードのユーザーの利用額が増える傾向も確認されています。日本でもこのようなクリプトをクレジットカードに応用する動きが起こっていますよね。