「(Web3は)スピード勝負。単にビジョンを謳うだけでなく、いかに早急に実行できるかがカギとなる」(筆者)
吉川:この他にもWeb3の文脈でさまざまなユースケースが広がっていますね。特に、NFT(非代替性トークン)の盛り上がりは顕著です。私は最近、世界最大のNFTカンファレンスである「NFT.NYC」に行ってきたのですが、ニューヨークの街中をジャックしたような巨大なお祭りのようでした。
現在はPFP(プロフィール画像)やアートが多くの取引量をしめていますが、「機能的NFT」への関心も高まっています。例えば、リップルとしても注目している分野として、カーボンクレジットのNFT化があります。不動産のNFT化も大きな可能性があります。NFT周りの金融サービスである「NFTFi」の分野も注目されていますね。
これまでNFTの発行基盤としてはイーサリアムが主流でしたが、さまざまなオプションが登場しています。リップルが活用するパブリック・ブロックチェーンのXRPレジャーでも、新たなNFT規格の採用が現在コミュニティ投票中です。これはスマートコントラクト(契約の自動化)を使わずに、プロトコルレベルでNFTをネイティブにサポートするもので、簡単なステップで、かつ高い安全性でNFTを発行することができます。
また、先ほども説明した環境にやさしい点で、思想としてサステナビリティを重視するアーティストやクリエイターの間で注目が高くなっています。
近藤:昨年、SBIグループではNFTマーケットプレイス「nanakusa」を運営する企業を買収し、新たにSBINFTとしてNFT事業を展開しています。
昨年より一気にNFTという言葉が広まりましたが、いざ実際にNFTを購入しようとすると自身で「MetaMask(メタマスク)」などのウォレットを準備して、暗号資産取引所で暗号資産を購入する必要がありますので、大衆化までのハードルはまだまだ高いと感じています。SBIグループではNFTがより一般化できるよう、簡単にNFTを購入できるような取り組みを考えています。
吉川:DAO(ダオ:分散型自律組織)にも注目しています。Web2からWeb3へのキャリアスイッチはシリコンバレーでトレンドになっていて、DAOにフルタイムで就職する人も増えてきています。日本でこれらの動きが活発になるにはまだ法規制や税制面で課題が多いですね。特に、未実現での暗号資産利益でも課税されてしまうなどの税制面での課題が残っていますね。
近藤:トークンの会計・税整備には課題が多いですね。例えば、IEO(暗号資産交換業を介して行われる資金調達)は日本では2件の事例がありますが、発行時の会計上の課題が残っています。上場企業のIEOについては会計基準が追い付いていないのが現状です。6月にはWeb3の環境整備の本格化に向けた方針を閣議決定され、自民党のNFT政策検討プロジェクトチームによって進められていた「NFTホワイトペーパー」の中でも議論されており、今後制度が変わることを期待しています。
吉川:政府がこのような動きを見せているのは喜ばしいことですが、世界中の政府がWeb3に関しては国家戦略として取り組み始めているので、これからがスピード勝負。単にビジョンを謳うだけでなく、いかに早急に実行できるかがカギとなると思います。