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2022.09.01

人的資本へ注力と言われても・・・人の力を開放する必須の着想

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日本の人的資本は、先進諸国の中でも各指標で低水準


最初に各国の経済成長率を見ていきます。経済成長率自体は、日本も1.1%成長しているのですが、内訳を見ると「労働参加率」の伸びが寄与しています。つまり、女性やシニア層の労働参加が伸びている一方、労働生産性の経済成長への寄与は少ない状況です。

●日本の人的資本の現状:経済成長率の伸びの多くは労働参加率の向上によるもの


 【経済成長率の伸び率の国際比較】(2010〜19年の平均成長率)
経済成長比較
出所:World Bank Data, ILO STAT Databaseを基に作成

下のグラフは、企業の人材投資──OJTを除くOFF-JTの研修費用の国際比較(対GDP比)です。日本は2010~2014年、0.1%にとどまり、米国(2.08%)やフランス(1.78%)など先進諸国に比べて低水準。近年はさらに低下傾向にあります。

●企業の人的投資(OJTを除くOFF-JTの研修費用)


【企業の人材投資(OJT以外)の国際比較(対GDP比)】
日本企業の人的投資(OJTを除くOFF-JTの研修費用)は2010ー14年に対GDP比で0.1%にとどまり、米国(2.08%)やフランス(1.78%)など先進国に比べて低い水準にある。かつ、近年はさらに低下傾向にある。ただし日本企業は伝統的にOJTに力を入れる企業が多いため、OFF-JTの研修費用のみで人的投資を語る場合は注意が必要。
人的投資の国際比較
(注)内閣府「国民経済計算」、JIPデータペース、INTAN-Invest databaseを利用し、学習院大学経済学部宮川努教授が推計。(出所)厚生労働省「平成30年 労働経済の分析-働き方の多様化に応じた人材育成の在り方について」を基に作成。

では、働く人一人ひとりは、どれくらい「生き生きしている」のか。その現状は、米ギャラップ社によるエンゲージメントの世界比較調査(2017年発表)に表れています。「熱意あふれる社員」の割合は、日本は6%。調査対象139カ国中132位と、かなり低いレベルにあります。

●日本の人的資本の現状:「熱意あふれる社員」日本は世界で最下位レベル


米ギャラップ社の調査(2017年)によると、日本は熱意あふれる社員の割合が6%で、調査対象139カ国中132位という結果になった。
エンゲージ度合いの比較
出所:State of the Global Workplace2017;GALLUP

人的資本への投資をしぶり、現場では熱意をもって働いている人が少ない。これが日本の厳しい現状と言えます。

データで見ると、つまり「人的資本経営(人を大切にする経営)ができている」という思い込みは非常に危険であるということ。世界的な人的資本経営の潮流の中、取り組みを見直し、促進していく必要があります。
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寄稿=津田 郁(リクルート)

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