ソニーがマンCとの協業発表で「メタバース」という言葉を避けた理由

(c)SONY


確かに、メタバースはすごいらしいというのはよくわかる。ただ、それで何がどう変わるかはまだ想像の域を脱しておらず、筆者自身イマイチ実感がない。
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「ファンの方にとって、チームとの関わりにおいて一番大事な場所はスタジアムでしょう。そこで良いパフォーマンスが行われて、それを楽しむのがベースですから、それをバーチャル上に再現しようと考えています。

ただ、リアルな試合が最高であることに変わりはないので、完全にコピーすると言うより、ある程度現実に忠実に再現しつつ、リアルでできない要素を加えていこうと考えています」

高い技術を持っているからといって、何でもかんでも取り入れればいいというものではない。持てる技術を詰められるだけ仮想空間に詰め込んだとしたら、確かに想像もできないほどすごいことができそうなのは頭ではわかるが、たぶん、体がついていかないだろう。
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「我々もそれは身に沁みて分かっていて、最新の映像技術を使おうとすると、クリエイターが、それは嫌だと言うんです。最近も普通に観ていれば気づかないようなアーティストのミュージックビデオ映像に、プロがアッと驚くようなシーンがいっぱい入っているんですが、とても自然。やりすぎない方が多くの人に喜ばれるという良い例ですね」

ソニーグループ執行役員の山口周吾氏(写真右)とソニーグループ・事業開発プラットフォーム新規事業探索部門コーポレートプロジェクト推進部統括部長の小松正茂氏
ソニーグループ執行役員の山口周吾氏(写真右)とソニーグループ・事業開発プラットフォーム新規事業探索部門コーポレートプロジェクト推進部統括部長の小松正茂氏

エンタメ一番の楽しみ、「体験の共有」を多くの人々へ


このソニーとマンチェスター・シティとのチャレンジが、具体的にいつどのような形で展開していくのか。詳細はまだ明かせないそうだが、時間や空間によって今まで人々を隔てていた壁を壊すことに繋がっていくのだろう。

「今回の提携発表後に、日本のとあるマンチェスター・シティのファンの方から僕宛てにお礼の手紙をいただいたんです。手と足に障がいのある方で、コロナ禍になる以前から試合を見に行くのは困難だった。日本国内はもちろんのこと、海外のマンチェスター・シティの試合を見に行くなんて相当ハードルが高かったはずなんですが、そういう方にも我々は貢献できるんだと改めて感じることができました」(山口氏)

技術の歴史を振り返ってみると、スポーツの試合はその時間、その場所に行かないと観られないものだった。しかし、テレビができてその場所にいなくても観戦できるようになり、録画によって時間の壁も超えることができた。今回のプロジェクトはここからさらに、世界中のファンを繋げて、どんな人にでも喜んでもらえるものになると、山口氏は確信したそうだ。

「エンターテインメントの楽しみというのは、体験を共有することが一番だと思います。我々が目指すのは、ただコンテンツを視聴するだけではなくて、バーチャルで遠くにいる人、事情やハンディがあってそこに行けない人とも体験を共有することです。このプロジェクトを進めていけば、そういった楽しみ方も変えられるんじゃないかと。それにチャレンジしていきたいと思っています」(小松氏)
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文=定家励子(パラサポWEB) 写真=吉永和久

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