ビジネス

2022.08.08 07:30

「そのときある物で試せ」アポロ13号のクルーが教える教訓(その2)

NASA

ビジネスにおいて最も難しいことのひとつが予測だ。半年後に市場がどうなっているか、また、急速に変化する状況に対して顧客がどう反応するかを見極めることは、経営幹部にとって不可欠でありながらも、難しい仕事だ。

ある意味、ビジネスのトップランクで活動するには、宇宙船のような遠隔地にいるのと同様のオペレーションマインドが必要なのだ。

そこで、アポロ13号の宇宙飛行士フレッド・ヘイズ氏からの2つめの教訓「そこにある物で試せ」をお送りする。
(最初の教訓「慌てるな」の記事は、こちらのリンクから)

スペースシャトルの飛行試験

スペースシャトルは、飛行機と同じような空力設計を施した最初の宇宙船だ。通常の滑走路に着陸できることが画期的だったが、飛行許可を得るには、着陸までの無動力滑空(フリーフライト)の間に宇宙飛行士たちにトラブルが発生しないことを保証するため、厳格な飛行試験が必要だった。

NASAの実物大試作機はスター・トレックから「エンタープライズ」と名づけられた。エンジンも熱防護システム(ヒートシールド)もなかったという意味で、本物のスペースシャトルではなかったが、大気圏内だけで活動するので、これで十分だった。

特別に改造されたボーイング747を使った合体飛行など、十数回の飛行試験が行われたが、中でも5回のフリーフライトは最も記憶に残るものだ。ボーイング747はオービター(スペースシャトル本体部分)を高高度まで持ち上げてから切り離し、切り離されたエンタープライズは滑空してカリフォルニア州のエドワーズ空軍基地に着陸した。

アポロ13号の宇宙飛行士フレッド・ヘイズ氏は、1977年に行われた5回の飛行試験のうち、3回に副操縦士として参加した。代替機がなかったので、試作機の操縦にはとても気を遣ったと回顧している。「もし、事故を起こしたら大統領が計画を中止すると心配していました」とヘイズ氏は語る。

1977年の飛行試験は、テクノロジーの違いを考えると現代とは当然大きく異なる。今では、フライトシミュレーターや人工知能、高度なモデリングによって、メーカーやパイロットはリアルに感じ取ることができるが、当時はそのときあるものでしか試せなかったのだ。とはいえ、実際に飛んでみないと何が起こるかわからないからこそ、今でも飛行試験が行なわれている。
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翻訳=酒匂寛

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