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2022.08.03

「CO2見える化」で好調のブーストテクノロジーズ 外資参入の激戦をどう攻めるか

代表取締役の青井宏憲(撮影=藤井さおり)

2020年10月、政府は温室効果ガス排出を2050年までに全体としてゼロにする、「カーボンニュートラル」を宣言。2022年4月からは、プライム市場へ上場する企業に、非財務情報の開示が課されるようになった。

二酸化炭素(CO2)を含む温室効果ガスの排出量の開示が実質義務化され、企業は今、脱炭素社会へのシフトを急激に加速させている。

そんな時代の潮目を背景に躍進するのが、2015年に創業されたbooost technologies(ブーストテクノロジーズ)だ。「脱炭素化テクノロジーパートナー」を掲げ、組織のカーボンニュートラルを実現させるクラウド「ENERGY X GREEN」を展開する。サプライチェーン全体のCO2排出量を算出し、削減の提案まで行う。

すでに2万拠点以上での導入実績を誇り、5月から小売大手のイオンがCO2の見える化を開始した。イオングループだけでも300社余あり、そのバリューチェーン全体では数十万社にも及ぶ。

6月からは、LINEやヤフーを傘下に収めるZホールディングスでも利用が始まるなど事業会社からの引き合いが急増しているという。

今年2月にはシリーズAで12億円の資金調達に成功。事業拡大のフェーズを走るが、スタートアップがプライム上場企業と対等に渡り合い、選ばれるハードルは決して低くはない。

「脱炭素DX」のパートナーになぜ選ばれるのか。創業者で代表取締役の青井宏憲(あおいひろかず)はその理由を「圧倒的な業界への知識レベルの高さにある」と胸を張る。競合企業も増えるなか、大手企業の信用を得る手腕とはどのようなものか。

「経営と現場」双方の視点が不可欠


脱炭素社会を実現するには、電力や石油などのエネルギー使用時に排出されるCO2の総量を、製造から小売、物流までバリューチェーン全体で計測する必要がある。測って可視化しないことには、対策が打てないからだ。

大手企業ほどCO2排出量が膨大で、対策に求められる知識や関連企業数、対応拠点数が多く、影響範囲が大きい。そのなかで外部パートナーが信用を得るためにはまず、大手企業の担当者をリードできるかが重要だと、青井は力を込める。

「トップクラスの企業のサステナビリティ推進室や、経営企画のESG担当者は、専門性が高く、脱炭素社会の先進的な取り組みなどに詳しい知識を持っています。

『対等な関係』では通用せず、彼らを凌駕する業界知識や、目指す世界をともに実現できそうだという信頼関係を築けることが重要です。脱炭素やサステナビリティへの取り組みが中長期に渡って経営にどう影響を及ぼし、それがプロダクトにどう組み込まれているのかを説明し、顧客を牽引していく力が必要です」

実際、青井は独立前のコンサルティング会社時代から、カーボンニュートラルやエネルギー関連の知識を10年以上に渡り高めてきた。
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文=山岸裕一 編集=露原直人 撮影=藤井さおり

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