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2022.08.02

米出版大手2社の「合併阻止」を目指すバイデン政権の動き

Alejandro Guzmani / Shutterstock.com

米司法省は8月1日から始まる裁判で、米出版最大手「ペンギン・ランダムハウス」による同業大手「サイモン・アンド・シュスター」の買収を阻止しようとしている。連邦政府は、買収が成立すれば出版される本の数が減り、読者と著者に損害を与えると主張している。

米メディア大手バイアコムCBS(現在はパラマウント・グローバル)は2020年11月、傘下のサイモン社を同業のペンギン社に約22億ドル(約2900億円)で売却する計画を発表したが、司法省は1年後の2021年11月に連邦裁判所にこの取引の阻止を求めて提訴した。

ペンギン社は独メディア大手ベルテルスマンの子会社で、この買収が成立すれば、米国で1位と3位の出版社が経営統合し、巨大出版社が誕生することになる。しかし、司法省は「買収によって出版社間の競争が減り、書籍の全体的な点数や創造性、多様性を低下させる可能性が高い」と主張した。

出版社側は、この買収が司法省が主張するような競争を阻害するものではないとし、ペンギン社とサイモン社が著者たちにより良い取引を提示することを促進し、その結果、他の大手出版社にも「より厳しい競争」を強いことになると主張してる。

また、司法省は、巨大出版社の誕生により、著者に支払われる前払い金の額が引き下げられると主張しているが、出版社側は、ここで問題とされるベストセラー作家との取引は、毎年85冊程度の取引に限られると反論している。

さらに、ペンギン社とサイモン社は、これまでと変わらず個別に運営され、互いに競い合うことになると出版社側は主張しており、「経営統合が競争を阻害する」という政府の主張と対立している。

ペンギン社とサイモン社は、アシェット・ブック・グループやハーパー・コリンズ、マクミランとともに、出版業界の「ビッグ5」と呼ばれている。ペンギン社は、毎年2000冊以上の新刊を出版し、サイモン社は約1000冊を出版しているとされる。

今回の司法省の訴訟は、バイデン政権による広範な反トラスト(独占禁止法)の取り組みの一環と言える。バイデン政権は、メタやユナイテッドヘルス・グループなどの企業による買収にも神経を尖らせている。

この裁判は、2~3週間続く見込みで、最終的な判決は11月に出る見通しだとCNNは報じている。著名作家のスティーブン・キングも証言を行う予定で、彼は司法省の訴えを「歓迎している」と述べており、政府側に立って証言を行うと見られている。

編集=上田裕資

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