ライフスタイル

2022.08.10 20:00

いま、長野県の「森」が注目される理由。秘密は「編集力」


奥田氏はこれまで農家を中心に中山間地域に生きる人々を多く取材してきた。編集がもつ意味合いを深く考える中で、価値の編集、目指す方向性の共有のための言葉の編集などを行なった。

その経験から、情報は“届かない”前提に立つことを重要視しており、同スクールでは、森と人々の興味関心を組み合わせることを常に意識しているという。


五感で森を感じながら、ワークショップやディスカッションが行われる

「情報の伝え方を編集することによって、森林への入口を広げる努力をしてきました。具体的には、次の3つのことを実践しています」

① 届いて欲しい人たちの言葉に置き換える
② 課題だけを伝えるのではなくわくわくするビジョンや体験を言葉やビジュアルに落とし込む
③ まちづくりやものづくり、教育などと森林を掛け合わせたコンテンツを用意する

「森そのものをそのまま『森です』、と都市に暮らしている人に届けても伝わらない。都市生活をしている人と森との関係性がどんどん希薄になっている中で、それをどう復活させるかというと、やはりどちらかが相手の文脈に合わせていくということが必要です。それを編集力だと捉えています」

自分の言葉で話すことで自分ごとへ


合宿は、森で働くための実践的なノウハウを学べる「森で働く」、森に新たな価値を付ける思考を学ぶ「森で企てる」の2つのコースに分けて開催。講師陣は、デザイナーや建築士、アパレル、アウトドアまで、多ジャンルでの実践者を招く。

しかし、今年のテーマである「身体性を持って森と出会う」のとおり、座学に留まらない。森歩きからはじまり、トレッキング、マウンテンバイク、木こり体験など体を動かして伊那谷の森をインプットしていく。実際に触れ、体感することで参加者の森林に対する解像度が上がっていった。


「森で企てる」コースでは、鳩吹山トレッキング後にマウンテンバイクで下山することで自生する資源とその環境をインプット

参加者は、年齢性別職業どれをとっても幅広い。共通するのは森林に対する熱い想いだ。合宿では、インプットの時間の後には必ずアウトプットの時間があり、参加者同士で濃密に意見が交わされる。受動を能動に変え、それぞれが自分の言葉で話して自分ごと化できるよう、カリキュラム編集がなされている。
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文=佐藤祥子

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