経済・社会

2022.08.01 07:30

「原発9基再稼働」で貿易赤字改善の可能性 脱円安はありうるか 


2021年の貿易統計は、輸出額は83兆931億円、輸入額は84兆5652億円で1兆4722億円の赤字だ。特に、同年の4兆2779億円の液化天然ガス(LNG)輸入が貿易収支を悪化させている。LNGの輸入量を減らすことができれば、貿易収支の改善に寄与することができると考えられるのだ
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では、原発再開することで、LNGの輸入量削減にどれほどのインパクトがあるのだろうか。

2021年の国内LNG消費量は7432万トン。エネルギーセクターに精通したアナリストの塩田英俊氏によると「原子力発電所23基を今後稼働させた場合に期待できるLNG消費の削減量は、年1300万トン程度と試算される。金額ベースでは年間7500億円程度」とのレポートを公開している。

この試算に基づけば、原発1基の再稼働で年間約57万トンのLNGが削減でき、326億円のコストカットに繋がることになる。9基再稼働で約2934億円、また25基の稼働で8150億円のコスト削減に繋がる。2021年の貿易統計を基準に考えた場合、原発の再稼働によって1兆4722億円の貿易赤字のうち、9基稼働で約20%、25基稼働で約55%の赤字幅を押さえることができる。
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原発
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もちろん原発再開だけで、貿易赤字を吸収できるほどの金額ではないものの、改善には寄与する。為替相場は、7月14日に1ドル=139.38円を付けたあと、7月22日には135.56円までの円高に進行した。この動きは、7月26日・27日に開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)の利上げ幅が「1%」ではなく「0.75%」と予想する向きが強まったことと、利食い売りによる円高だと説明できる。

ただ、今後、貿易統計の赤字幅が縮小するデータが発表されることを為替市場が織り込むことも十分にあり得る。

原発再開は、円安基調の方向性そのものを変えるほどではないが、円安圧力をある一定程度押さえるインパクトはあると考える。

文=馬渕磨理子 編集=露原直人

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