世界のエネルギーの中で化石燃料が提供する割合は83%で、世界の温室効果ガス全体の73%は化石燃料から排出されている。大半の気候科学者らは、温室効果ガスが地球温暖化の原因だと考えていて、地球の気温は1850年から摂氏1度以上増加している。
こうした変化は最初、S字型曲線のように穏やかに始まったものの、2015年のパリ協定以降は急激に増加した。私たちは毎年、再生可能エネルギーにどれほど投資すべきだろうか?世界は化石エネルギーをどれほど迅速に削減すべきだろう?また、化石燃料産業で失われ得る職はどうか?労働者を、再生可能エネルギー業界へとスキルアップさせることはできるだろうか?
再生可能エネルギーへの移行で大きな躍進を遂げてきた国にスコットランドがある。
これまで石油・ガス産業の恩恵を受けてきたスコットランドでは、石油・ガス産業から約50万の雇用と巨大な国富が生まれた。2019年のエネルギー消費の75%は石油とガスから得られたものだったが、英全土では石油・ガスの生産量が20年以上前にピークを迎え、その後は大きく衰退した。英国は現在、ロシアを含め他国から石油やガスを輸入している。
スコットランドでは石炭と原子力は下火だ。電力の内訳としては風力が41%、原子力が33%、天然ガスが14%、水力が8%、バイオエネルギーや廃棄物が1.4%、太陽光が1.2%だ。輸入されているのは1.1%のみだ。
スコットランドは石油やガス、ガソリンの価格高騰や温室効果ガス抑制の必要性を受け、再生可能エネルギーをさらに増やすか、石油とガスを増やしつつ温室効果ガスの排出量に厳しい規制を課すかの選択に直面している。
同国では、洋上風力エネルギーが前途有望な代替エネルギーとして成長中だ。リース権を巡る4回目の入札が1月に行われて以降、それぞれ平均コストが20億ドル(約2600億円)ほどの新たなプロジェクトが17件登録されている。これらのプロジェクトをフル稼働させれば、英国の全家庭で使用されるエネルギーの85%をまかなえる可能性がある。
スコットランドの洋上風力発電プロジェクトには今後、労働者が必要となる。あるエンジニアは石油・ガス業界で11年勤務後、洋上風力発電所のプロジェクトマネジャーに転身した。この男性のそれまでの経験は、その多くが転職後も活用できるものだった。
しかし彼は、環境に優しい「グリーン」な仕事が石油・ガスの一般的な雇用を全て置き換えることができるわけではないと警鐘を鳴らした。
スコットランドでは2019年、洋上風力発電分野のフルタイム職が約4700件だったのに対し、石油・ガス業界は約8万6000件だった。