企業と街 日本で広がるウェルビーイングビジネスの共通点

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世界では500兆円を超えるマーケットに成長していると言われているウェルビーイングビジネス。日本では、現在「ウェルビーイング」が大きなテーマとして設定され、積極的に進められているビジネス領域が2つあります。

1つは、企業が従業員のウェルビーイングの実現を目指す「ウェルビーイング経営」、もう1つは、住民起点、人間中心で暮らしやすさを実現するために地域や商業施設を開発する「ウェルビーイングな街づくり」です。

企業が従業員のウェルビーイングを意識するきっかけになったのは、「働き方改革」です。そして、その背景にあるのは、少子高齢化にともなう生産年齢人口の減少と働くスタイルの多様化です。

優秀な人材の確保は、企業の持続的な成長のために最も重要な要件の1つですが、昨今、さらに状況が厳しくなってきています。従来の採用戦略のままでは新卒・中途の優秀な人材の確保はままならず、採用できたとしても、その会社に魅力がなければ早々に離職する人が増えてきました。

そこで企業が着目しだしたのが、従業員のウェルビーイングです。

日米を比較すると、新卒志向が強く、環境整備よりも人材育成への投資を優先してきた日本企業に対し、ジョブ型雇用(職務に適した人材を採用する方法)のアメリカでは、採用した人たちが能力を最大限に発揮できる環境への投資が優先されます。その米企業が、従業員のケアと親和性の高いウェルビーイングにいち早く投資するようになるのは、自然な流れでした。

遅れながらも、日本においてもウェルビーイング経営の取り組みが注目されることも増えてきました。

例えば、楽天では、「コレクティブ・ウェルビーイング」に関するガイドラインやチェックリストのツールを開発、ウェルビーイングの文化を社内に根づかせるためにCWO(Chief Well-Being Officer)という役職も登場しています。

SOMPOホールディングスは健康保険組合と連携して、個々の社員の健康状態に合わせた取り組みを実施。日立製作所から独立したハピネスプラネットは、個人と組織のハピネス向上を目的としてソフトウェア開発に取り組んでいます。

また、経営コンサルティング会社から人材派遣、さらには能力開発系スタートアップ企業など、ウェルビーイング経営を提案する側も、さまざまなソリューション活動を展開しています。
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文=藤田康人

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