研究チームは米国の成人数百人を対象に、州と連邦の両政府に対する信頼度や、仕事に関する幸福度などについてのアンケート調査を実施。その結果、政府への高い信頼度が勤務態度の良さや全体的な幸福度と密接に関連していたことが明らかになった。
起業意欲の促進
スタンフォード大学のなどの研究チームによる研究でも同じような結果が出ており、政府への信頼が起業家精神の高さと強くつながっていることが示された。
同研究によると、韓国では2016年の朴槿恵元大統領に対する弾劾訴追を受け、人々の政府に対する信頼が高まり、その後5年で人々の起業意欲は向上。特にSTEM(科学、技術、工学、数学)分野の卒業生で意欲が高くなっていた。STEMの学生が立ち上げる技術分野での事業には、他の分野よりも確実性が必要なことが背景にあるとみられる。
国連が発表した今年の「世界幸福度報告書」では、国民の政府への信頼と全体的な幸福度の間に強い相関関係があることが指摘されている。これは、新型コロナウイルスの大流行により、人々の健康が政府の有能さと強く結び付いたことで、さらに顕著となった。
このことは、フィンランドが5年連続で幸福度ランキングの首位を飾ったことからも明確に示されている。同国は経済協力開発機構(OECD)の政府に対する信頼ランキングで3位になった。
政府機関ビジネス・フィンランド(Business Finland)でスマートライフ・フィンランド・プログラムの責任者を務めるカリ・クロスネルは「私たちの社会では、全てがきちんと機能し、教育や医療は無償で、全てが安全・安心な方法で提供されている。そのため、人々を幸せにすることにより焦点を当てることができる」と説明している。「これにより、人々は起業家になるための基盤と展望が得られる。全ての起業家に必要な楽観的な考え方と、機能する機関による支援の両方があるからだ」
同国は最新の「グローバルイノベーション指数」では7位に入っており、首都ヘルシンキだけでもスタートアップの数は4000社を超えている。その多くはノキアの事業破綻により失職した優秀なエンジニアが設立したものだ。
日本を含むアジア諸国を対象とした研究からは、政府などの重要な公共機関への信頼と、全体的な幸福度の間に強い関連性があることが示されている。一方で、ワシントン州立大学の研究では、政府を信頼する人の割合が1960年代の約80%から現在は約20%まで激減したことが示された。