ルックスは初代などからインスピレーションを受けているし、ターボ・エンジンは力強い405psを発揮している。しかも、メインマーケットのアメリカでは、その脅威的な4万ドルという基本価格がライバルを圧倒している。
ビッグニュースとして話題となったコンセプトカーの発表から約半年。市販モデルができ上がったので、北海道の日産テストコースで堪能した試乗レポートをお伝えしよう。
最近のスポーツカーづくりを見ていると、カーメーカーが他車メーカーとコラボをして作っている場合がほどんどだ。やはり、1台のスポーツカーを作るには莫大な開発費がかかるので、例えばトヨタ・スープラとBMW Z4、トヨタGR86とスバルBRZ、そしてマツダ・ロードスターとフィアット124スパイダーというようなコラボがいい例だ。
今回、生まれ変わった7代目のZを手がけた日産は、他のどのメーカーともタイアップしていない。いっぽうで、コスト削減のため12年前に登場し、2020年に生産中止になった先代370Zのプラットフォームを、新型Zはほぼそのまま採用し、V6エンジンは現行型「スカイライン400R」や米国仕様インフィニティ「Q50レッド・スポート」が搭載しているパワーユニットを採用。
つまり、プラットフォームとエンジンは新しくないけど、ボディはすべて一新している。最初、コンセプトカーを見た時、巨大な四角いグリルはどうかなと心配したけど、日産のデザイナーたちは小さなシルバー色のインサートで飾ることによって、見事に細かいニュアンスを生み出した。真横から眺めると美しい。やはり、元々のZのプロポーションを保ちながら、うまい具合に新旧、つまりレトロとモダンのマリアージュがデザインを昇華させている。
海外、いやアメリカでのデザインに対する評価はというと、これがとても高く評価されている。オンラインのファンのサイトなどを見てみると、ライバルのトヨタ・スープラよりも格好いいとされている。ただ、デザイン面で海外で眉をひそめられているのは、燃料キャップの大きさだね。外観デザイン担当に聞いてみたところ、確かにそのフタは大きいけど、それはリアのブリスターフェンダーに載せた燃料の口に燃料ポンプがちゃんと入れられるようにするためだという。
横のスタイリングで目立つのは、オプションでは黒のルーフの選択もあるけど、ルーフとサイドの間を埋める刀の形をしたクロームメッキのメタルストリップ。フロントは主に1969年に登場した初代「240Z」のグリルとヘッドライトの形を意識しているけれど、ブレーキライトのスタイリングは、1989年に出た300ZXのデザインを潰したオーバルのような形をしている。
グレードによって異なるのは、シート(とドアトリム)表皮と電動シート調整の有無、タイヤサイズ(18インチと19インチがある)と、それに伴うブレーキ(上級19インチは前後とも対向ピストンのアルミキャリパーとなる)、そしてメカニカルLSDの有無くらいだ。
日本仕様のZのラインナップは、標準「フェアレディZ」「S」「T」「ST」という4つのグレードで構成されている。スポーツを示すSは走りの装備を充実、ツーリングを示すTは快適装備を充実、そしてSTは両取りの最上位グレードと、こういったグレード分けは旧型モデルと変わらない。6段MTまたは9段ATのフェアレディZは524万円、9ATのみのTは568万円、6MTのみのSは606万円、6段MTまたは9段ATの選択のあるSTは646万円になっている。ちなみに、すでに売り切れになっている6MTのプロトスペック仕様は696万円。