コックピットもレトロとモダンを足して2で割ったような感覚だけど、シックに仕上がっている。スポーツカーらしいクラシックな意匠と最新のデジタル技術を融合させている。フェアレディZになくてはならない代表的デザインの一つは、ダッシュボード中央に配置される3連メーター。
右から順にブースト計、ターボ回転計、電圧計と並ぶけど、やはり、その3連メーターがあると落ち着くし、その気にさせてくれる。ただ、センタートンネルが多少厚い分、ももの太いドライバーは多少窮屈に感じるだろう。僕の身長は189cmだけど、左足でクラッチを踏んで、ギアをシフトした時に、左ひざあたりはトンネルに触った。
3連のサブメーターの下方にエアコン吹き出し口とオーディオのスイッチ類を配置する内装は、初代「フェアレディZ」のそれを模したもの。センターディスプレイの画面サイズは9インチだけど、使いやすい。メーターパネルは、ナビゲーションやオーディオの情報を大きく表示するモードのほか、センターにタコメーターを配置するモード(写真下)も選択できる。
「スカイライン」にも採用されている3リッターV6ターボエンジンは、最高出力405PS、最大トルク475Nmを発生。グレードにより6段MTまたは9段ATが組み合わされる。全5グレードのうち4グレードに設定されるMT車(写真下はそのシフトレバー)。1速と2速には新開発のシンクロが採用されている。AT車も4グレードが選択可能。多段(9段)化することで、常に最適なギアの選択が可能となっている。ローンチ・コントロールを試してみたけど、僕の時計でちょうど4秒フラットだった。これは速い。パワー感は申し分ない。7000回転からのレッドラインまで充分回せるし、2000回転からでもトルクは太く反応してくれる。180km/hのリミッターまで出してみたけど、全然ストレスがなく、どの速度でも姿勢は安定していた。
まずは、6速MTのS仕様に乗ると、そのトランスミッションの滑らかなのに驚いた。急加速しても、1速から2速に入れる時、1速と2速には新開発のシンクロが強化されているので、スパッと綺麗に入るし、例えば、3速から2速にシフトダウンすると、自動的に回転を合わせるブリッピングをしてくれるから、自分がプロのドライバーになった気分だ。癖のないクラッチをスッとつないで低回転域でギアをポンポンと上げながら走るのに、クルマの特徴は丁寧に整っている。9速ATのT仕様に乗り換えると、パドルシフト付きのミッションはどのギアでも、スムーズで速いし、シフトショックもない上等な印象だ。
期待通りに、ステアリングもピンポイントでちょうど良い重さで、どの速度域でも狙ったラインをトレースしてくれる。しかし、一番驚いたのは「乗り心地」。これは本格的なスポーツカーにも関わらず、路面のウネリが激しい道路でも、サスペンションは路面からくる衝撃をちゃんと吸収して、乗り心地を穏やかにしてくれる。
さて、新Zはどのぐらいお得か、スープラの最高出力と価格を比較しよう。405psのフェアレディZバージョンSは、スープラと似たようなブレーキ性能を持つものの、その価格は606万円。一方、387psを叩き出すトヨタ系ターボ付き6気筒搭載のスープラは731万円で、新Zよりも125万円高い。Zはスープラより120kgほど車種が重い。その分、スープラはZより若干加速性はいいけど、2台を比較した場合、ルックス、安定性、価格設定、そしてコストパフォーマンスではZに軍配が上がる。
※2022年7月19日・日産は7月末で受注を一時停止すると発表。再開が待たれる。
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