体力勝負のがんばりではなく、優先順位を決めて、力を抜くところは抜くことが重要になります。今やらなければならないことの優先順位をつけて、全てを自分でやろうとせずに他人に任せたり、後回しにすることも大切です。
実は「がんばる」よりも「力を抜く」方が、案外難しく、経験がないと適切に力を抜くことができません。
生命活動を営むエネルギーである「気」の総量をボールにたとえたとき、その大きさは生まれたときから個人差があります。「エネルギー・ボール」と呼んでいるんですが、どんな大きさであったとしても、28歳をピークに年齢とともに小さくなっていくんです。
気の総量が小さくなっていくと同時に、エストロゲンなどの女性ホルモンが物理的に減少して体が変化していく40代〜50代は、体を調整していくために余分な「気(エネルギー)」を使います。
気の最大量を100としたら、更年期のホルモン変動にともなう体の調整にたとえば20くらいを無意識に使っているとすると、残りの80の気で日々の生活を営んでいかないといけない。だから同じことをしていても疲れやすくなります。
余分な「気」を使わないように、戦略的に気を抜くことが大事になります。
(参考:『女40歳から「不調」を感じたら読む本』静山社)
──使える自分の気(エネルギー)には限りがあることを認識するだけでも、行動が少し変わってきそうです。
更年期のときは、女性ホルモンが減少することによる心身のアンバランスによる症状が火山のマグマのように潜在的に潜んでいます。
マグマが噴出するような刺激がなければ爆発はしないんですが、ストレスなどによる自律神経の乱れによって、さまざまな症状が一気に吹き出してしまいます。
自律神経を整える手軽な方法は、適度な運動。ランニングなど激しいスポーツをする必要はなくって、ちょっと汗をかくような運動をすることが大切です。あとは、温かいお湯に浸かったあとに冷たいシャワーを浴びる交互浴もいいでしょう。サウナもいいですよ。在宅ワークなどでずっと家にいる人は用事をつくって出かけてオンとオフの切り替えをつくるのもおすすめです。
──無駄に気を使わず、自律神経の乱れを感じたら、整えていく。
あとは積極的に休むこと。休むことが苦手な方も多いと思うんですが、歳を重ねてきたら休養を摂ることも体に必要な「戦略的なメンテナンス」です。
明日がんばるために、今日は休む。自分を責めずに、自分にご褒美をあげながら、心身をゆるめていきましょう。
実は筆者も、東洋医学研究所の木村先生のもとへ通う患者の一人。便秘に肩こり、冷え性に生理痛……。それまでよくあることだとやり過ごしていた「小さな不調」に対して、巡る季節に沿った、その時々に必要な漢方薬を処方してもらっています。通い始めて1年弱。少しずつ自分の体が発するサインに目を向けながら養生し、健やかに過ごせるようになってきているように感じています。
生活の中で養生しながら、漢方薬などの治療、伴走者が必要な際は、漢方医に頼ってみることもおすすめです。
木村容子先生◎東京女子医科大学附属東洋医学研究所 所長・教授
東京女子医科大学附属東洋医学研究所 所長・教授。医学博士。内科学会認定医。日本東洋医学会専門医、指導医、理事。福島県生まれ。お茶の水女子大学を卒業後、中央官庁入省(国家公務員I種)。英国オックスフォード大学大学院に留学中、漢方に出会う。帰国後、退職して東海大学医学部に学士入学。2002年から東京女子医科大学附属東洋医学研究所に勤務。2008年より日本初の「漢方養生ドック」をはじめる。著書に『太りやすく、痩せにくくなったら読む本』(大和書房)、『ストレス不調を自分でスッキリ解消する本』(さくら舎)、『女40歳からの「不調」を感じたら読む本』(静山社文庫)、『女50歳からの「変調」を感じたら読む本』(静山社文庫)、『漢方の知恵でポジティブ・エイジング』(NHK出版生活人新書)などがある。
※この記事は、2022年5月にリリースされた「柿の木便り」からの転載です。