自分の心身に何が起きているのか。不調を自覚することがスタートライン
──アンチ・エイジングではなく、ポジティブ・エイジング! 加齢による心身のおとろえをゆるやかにしていくために、何から始めればいいのでしょう?
漢方医学の根底には「一人ひとりは違う存在である」という考え方があります。
西洋医学では、採血など客観的な数値によってさまざまな患者さんがもつ症候や所見を基にひとつの「病気」として治療するケースが多いですよね。治療もたとえばがんに対しては抗がん剤や放射線治療など病気の原因にシャープにアプローチしていきます。
一方、漢方医学は、患者さんそれぞれの体質や心身全体のバランスを総合的に捉えて、一人ひとりオーダーメイドでアプローチしていきます。
たとえば同じ「便秘」という症状であっても、それが冷えからくるものなのか、鬱々とした気分からくるのか、気候の変化によるむくみからきているのか、人によって要因は異なります。便秘以外にどんな症状が重なってくるのかによって判断していくんですが、患者さんの心身全体に何が起きているのかを捉えることから、養生や治療のアプローチが変わってきます。
このため、まずは自分の症状や心身の状態を知ることがスタートラインになります。
また、西洋医学の標準治療が上手くいかないときには、自分の心身のバランスが崩れている場合があります。
たとえば、冷えがあったり、胃腸の働きが弱かったりするために、西洋医学の治療の効果が発揮できていないことがあります。そのようなときには、漢方治療で心身のアンバランスを治すことで、西洋医学の治療効果が高まります。
──なるほど。まずは、自分の心身の状態を知る。その点、東洋医学研究所では、通院する際に、4枚にわたる問診票を書くんですよね。
そうなんです。自分の体は自分が一番知っているはずなのですが、自分のことだからこそ生じる甘えや過信があったり、また、若い頃のイメージのまま止まっていることもあり、その結果、今の自分の状態を客観的に評価することができなくなります。
詳細な問診票に答えていくことで客観的な視点で自分の体を観察できるようになる。最初は体からのサインを積極的にキャッチできなくても、次第に、口が粘るな、生理痛がひどくなっているな、肩が凝るな、と不調に気づいていけるようになる患者さんは多いです。
漢方治療は患者さんと二人三脚になります。オーダーメイドだからこそ、患者さんが自身の症状や状態がわからないと治療もうまくいきません。患者さん自身の自覚症状が大切な情報になります。体が発するサインに気づけたところから、早めにアンバランスを治して整えていくことができれば、老化曲線もゆるやかにしていけるでしょう。