ライフスタイル

2022.07.23 18:00

がんばりすぎずに「気を抜く」 老化曲線をゆるやかにする「漢方養生」とは


漢方養生の鍵は日々の生活にアリ。食事、睡眠、運動、感情をコントロールする


──自分の体が発するサインに気づき、早めにバランスを整えていくために、漢方養生としてはどんなことができるのでしょう?
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漢方医学には「心身一如」、「心と体は一体である」という考えがあり、心身全体の調和をはかることに治療の目的が置かれています。

その一つの指標となるのが、「気・血・水」、生命活動を営むエネルギーである「気」と血液の「血」、血液以外の体液である「水」のバランスです。

この3つが過不足なく滞りなく体の隅々まで巡っている状態を「健康」と捉えます。逆にこのバランスが崩れると、体に変調がおきてくる、と考えます。
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生命の源とも言える「気」は元気、気分、気持ちの「気」なんですが、これを補っていくのが食事と睡眠なんです。家事に仕事に忙しくて、睡眠不足だったり食事内容が偏ったりすると「気」が補えなくなって、老化曲線は下がりやすくなります。

漢方養生のベースとなるのは「食事」「睡眠」「運動」「感情」のコントロールです。生活の中でこれらをうまくコントロールしながら、気・血・水を補い巡らせることができれば、健康を保ち、加齢に伴う老化をゆるやかにすることができると考えられています。

──感情のコントロールとは、具体的にどんなことですか?

漢方医学は中庸で、過ぎたら及ばざるの如し。色々な感情を持つことは大切ですが、感情の振れ幅が激し過ぎるのも体に負担になります。

「喜」「怒」「思」「悲」「憂」「驚」「恐」の七情の揺れが度を越えると病気の発生や老化を早めることにもなると考えられています。だからコントロールが必要。

たとえば春は五臓六腑のうち「肝(かん)」と関わりが深く、自律神経の働きに関与するので、春は自律神経の働きが乱れやすく、イライラしやすい季節です。怒りやすくなったときには「酸味」が効くので、酢の物を積極的に摂る。夏は「心(しん)」に関係があって、喜びが高まりやすい。喜ぶことは良いことなのですが、喜び過ぎるとどきどきして心臓に負担がかかります。

そういうときはゴーヤなどの「苦味」がよいです。秋の病は「肺(はい)」と関連があって、悲しくなりやすい。梨やれんこんなど「白い食材」で肺をうるおしましょう。冬の病は「腎(じん)」に関係があって、恐れを抱きやすい。腎を補うのは黒豆や牡蠣など「黒い食材」です。



──季節の移り変わり、気候の変化は私たちの心身にも影響を及ぼしている、と。そしてその揺れは旬の食材を摂ることでゆるやかにしていくことができるんですね。

「医食同源」ですので、食事はとても大切です。しかし、いろいろな症状があるときに、すべてを食事で補うことは難しいですよね。

漢方治療では生活の仕方、すなわち養生が第一ですが、養生をしても足りないところは、漢方薬や鍼灸によって補って巡らせていこう、というのが基本的な考えです。
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文=徳 瑠里香 イラスト=遠藤光太

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