ベゾスやマスクらのロケット どれが環境に悪いのか?

億万長者によるロケット打ち上げが2つの異なる理由で大気にダメージを与えている


しかし研究者たちは、マスク率いるSpace X(スペースX)のロケットとブランソンのVirgin Galactic(ヴァージン・ギャラクティック)は炭素を含む燃料を使用しているため、打ち上げ時に黒色炭素が発生するが、ベゾスのBlue Origin(ブルーオリジン)は液体水素を燃料としているため黒色炭素が発生せず、地球温暖化への影響度がはるかに低いことも指摘している。

一方、マレは「ブルーオリジンは水蒸気と窒素酸化物を発生させる。窒素酸化物は成層圏のオゾンを破壊し、水蒸気は温室効果ガスであり、中間圏(成層圏より上の大気層)で雲を発生させる。また、ロケットの製造やロケット燃料の生産など、サプライチェーン全体で発生する汚染物質もある」と語った。

研究科学者クリストファー・マロニー率いるNOAAの報告書は、成層圏の温度上昇と地球循環の変化においてロケットの黒色炭素が果たす役割をさらに強調し、「その両方が主に北高緯度におけるオゾン層全体の減少を引き起こす」と指摘する。つまり、スペースXとヴァージン・ギャラクティックの飛行による黒色炭素は「ダブルパンチ」となる。

とはいえ、研究者たちは、ロケットによるオゾン層破壊のほとんどは、ロケットの部品が大気圏に再突入する際に発生する排出物に起因すると考えている。「スペースXは第1段を再利用し、第2段を廃棄する大型の2段式ロケットを使用しているためだ」とマレは説明する。

この現象は、地球の大気圏に突入するあらゆる破片で起こる。中層大気に突入する隕石は、継続的に「自然な」酸化窒素の供給源となる。「しかし、もし私たちが宇宙ゴミを燃やして処分し続ければ、人為的な放出はすぐにこの自然の供給源に取って代わるだろう」とマレは付け加えた。

今回明らかになったことについて、マレらの研究チームは急速に成長している産業が環境に与える害を抑えるための規制が早急に必要だと主張する。しかし、価値判断は慎重に避けた。

「これは、私たちの結果に基づいて実現可能な提案をすることができる専門家の学際的なコミュニティに向けられた質問だ」とマレは話す。「宇宙観光は、有意義な研究のための打ち上げや、社会が通信や気象などで信頼を寄せる人工衛星のための打ち上げと比較すると、確かに必要な活動ではないように思われる」

そうであるなら、ヴァージン・ギャラクティックやブルー・オリジンのロケットが裕福なパトロンや高齢の俳優を乗せるのに対し、スペースXのロケットがスターリンク衛星を運ぶのを区別するのは有効かもしれない。

ただし、地球の大気圏にとってこの区別は何の違いもない。

翻訳=溝口慈子

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