ビジネス

2022.08.04 08:00

柿ピーなのに柿の種ゼロ? 亀田製菓「黄金バランス」誕生秘話

(提供:亀田製菓)


実は、マツコさんが候補としてあがったものの、話を持って行く以前に、大きな偶然が起きました。マツコさんが、ご自身の番組「マツコの知らない世界」(TBSテレビ)で、「亀田の柿の種」についてとても詳しくお話されたんです。
advertisement

番組からはマツコさん自身の「亀田の柿の種」愛が熱く伝わり、これは、「ファンダム(自然派生的、自発的な熱狂的ファンのこと。マーケティング分野で注目されている)」として企画に関わっていただけると確信しました。さっそく打診したのが、2019年の始めのことですね。

マツコさんをフィーチャーすると同時に、「当たり前を疑え!国民投票」の準備も始まりました。この時点では実際に商品をリニューアルするかどうか、社内ではまだ決まっていませんでしたが、まずは今の消費者の方々の本音を聞いてみようという思いで企画の準備が始まりました。

40年以上継続してきた柿の種6:ピーナッツ4の比率が今、受け入れられるのか? ──なんといっても時代や、食べる人の嗜好は高速で変わっていますから、どんな結果になるのかは予想不可能でした。当然、社内にも大きな期待と不安がありましたね。
advertisement

比率が1割変わると起きる、「あること」


さて、「当たり前を疑え!国民投票」キャンペーンの結果、新黄金バランス「7対3」が1位に輝きました。

企画実施時はあくまで消費者の本音を聞く事が目的でしたが、これほどの多くの投票をいただいたからには、実際の声を商品に反映したいとの思いが強くなりました。そこで「比率見直し委員会」を発足し、40年以上続けてきた「6対4」比率から新黄金バランス「7対3」への変更に向けた検討を開始したのです。またその試行錯誤を、「特設ページ「亀田の柿の種」商品化への挑戦!」で公開しました。

社内で大きかったリスク意識の通り、商品化、実装の壁は高かったですね。生産設備といったハードウェア入れ替えの問題はなかったものの、比率変更に際しては、ある大きな問題があったのです。

それは、油脂を多く含むピーナッツという食材を扱う際の「安全性」の問題でした。

比率が変わり、小袋の中のピーナッツの量が減ると、残存している酸素に対する油脂への影響が大きくなり、現在の賞味期限が担保できるのかといった課題があったのです。

具体的には、比率が1割変わることでどのくらいその劣化速度が上がるのか、「7:3」にした場合の賞味期間は「6:4」の時のままで安全なのか、といった検証が必要になってきます。

過去の知見やデータ、そして「お米総合研究所」(亀田製菓が蓄積した米関連の技術やノウハウを「機能性食品」や「機能性素材」開発に生かすべく、農学、工学や歯学の研究者たちで運営する研究開発組織)の協力も得ながら、検証、実装に取り組みました。そして、新黄金バランス「7:3」の商品化がようやく実現したのです。
次ページ > 「あなたにとっての亀田の柿の種とは?」

編集=石井節子 構成協力=岡田麻衣子

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事