その米菓市場の売上No.1※メーカー、亀田製菓からこの3月、「柿ピーなのに柿の種は入っていない」という新・珍商品「150g 亀田の柿の種 ピーナッツだけ 6袋詰」が発売され、多くの柿ピーファンをあっと言わせた。同社は、インド出身でロート製薬元副社長のジュネジャ・レカ・ラジュ氏が6月に会長兼最高経営責任者に就任で話題のほか、海外事業の展開や食品事業の取り組み等もテレビなどで取り上げられている(※インテージSRI+「煎餅・あられ2021年1月〜2021年12月メーカー別累計売上金額」による)。
実は「ピーナッツだけ 6袋詰」発売に先立つ2019年10~11月、同社は「亀田の柿の種」のベスト比率を「投票」で消費者に問う『私、亀田を変えたいの。キャンペーン 「当たり前を疑え!国民投票」』を実施した。CMキャラクターにタレントのマツコ・デラックスを起用し、SNSや郵送で投票を呼びかけた結果、有効投票数は実に25万5903票。
各年代、性別ともに「柿の種7、対ピーナッツ3」の重量比が最多得票数を得たことから、本格的に比率変更の検討を開始し、2020年3月に新比率へのリニューアルを決定。その後2020年5月に「7:3 黄金バランス」の「亀田の柿の種」が誕生した。
同社の「一人一人の声を聞き消費者と共にブランドを共創する」という究極の多様性マーケティングについて、そして「国民投票結果」実装の苦難について、亀田製菓 マーケティング戦略部マネージャー尾関太一郎氏に聞いた。
「比率」企画誕生、そしてマツコ・デラックス起用まで
日本人のソウルフードとも言える「柿の種」は、実は「海苔せんべい」「あられ」などと同様、商品名ではなく一般名称です。その「柿の種」市場で、亀田製菓の「亀田の柿の種」はおよそ70%のシェアを持っています。
とはいえ、2019年頃までの数年間、その売上げは停滞していました。
亀田製菓 マーケティング戦略部マネージャー 尾関太一郎氏
「国民的お菓子」と言っていただけるような状態になったからこそ陥っているのかもしれない、「あえて今買わなくても良い」というマインド。われわれはそこに課題感を募らせながら、「今手に取りたくなる」ような話題の提供、そして消費者との接点強化のための企画こそが必要であると感じました。もちろん、「亀田の柿の種をより良いブランドへ進化させたい」とも考えたのです。
まずは、ブランドをより身近なものに感じていただくためにも「消費者参加型」で本音を引き出す必要がありました。だからこそ、やらせや演出を排除し、「事実ベースで」「本音で」が前提でした。
さて、では「わかりやすく」「本音で」「メーカー目線ではなく消費者目線で」メッセージを伝えてもらえるアンバサダーは一体誰か? と考えた時に挙がったのが、マツコ・デラックスさんの名前だったのです。