HRAファーマは同日、自社の避妊薬「Opill」のFDA申請書を提出したと発表した。承認されれば米国で処方箋なしで購入できる初の避妊薬になるという。
同社によると、米国では1973年からOpillの使用が認められているが、入手するには処方箋が必要だ。
このピルは、人工的に合成された黄体ホルモンであるプロゲスチンと、女性ホルモンのエストロゲンを組み合わせている他のピルとは違って、プロゲスチンだけを含んでいる。組み合わせているタイプよりも血栓のリスクは低いが、月経周期の調節やニキビの改善など、組み合わせピルにある避妊以外の用途はない。
FDAはこのピルについておおよそ10カ月以内に決定を下すだろうと、とHRAの関係者はニューヨーク・タイムズに語った。
避妊薬の市販は米医師会、米産科婦人科学会、米家庭医学会などの医療団体から支持されてきた。
50人を超える議員は3月、FDA長官のロバート・カリフに市販の避妊薬の申請を「遅延することなく」審査することを求めた。これに対しカリフ長官はFDAが「経口避妊薬へのアクセス増加の公衆衛生上の利点を認識している」と述べた。
「妊娠の健康上のリスクの方が経口避妊薬使用のリスクよりも大きいため、患者が店頭で経口避妊薬にアクセスできるようにすることについては公衆衛生の観点から簡単に判断できる」と米医師会の理事会メンバー、デイビッド・H・アイズスは、米医師会の市販避妊薬の支持について6月の声明で述べている。
さらに多くの企業が追随するかもしれない。タイムズは、米避妊薬メーカーのCadence Healthも「2023年には申請書提出に近づきたい」と考えていると報じている。AP通信によれば、Cadence Healthの避妊薬市販のための治験は昨年、血栓の危険性があるためにFDAが治験参加者の血圧をより厳密にモニターするように求め、保留になった。
米家庭医学会が引用したデータによると、すでに100カ国超で処方箋なしで避妊薬が提供されている。
米国立健康研究センターの所長ダイアナ・ズッカーマンはAP通信に、避妊薬の利点は「本物」だが、「致命的な血栓の可能性というリスクに見合うものではない」と考えていると述べた。AP通信が引用したFDAのデータによると、組み合わせタイプのピルを使用した女性1万人あたり3〜9人に血栓ができ、一方で避妊していない女性で血栓ができる人は1万人あたり5人だ。
HRAの申請は、人工中絶を憲法で認められた権利とした「ロー対ウェード」の判決を米最高裁が覆したことを受けて、避妊薬が注目を浴びるようになった中でのものだ。
同社の戦略・革新担当最高責任者であるフレデリック・ウェルグリンは、タイムズに対し「本当に悲しい偶然だ」と語った。
中絶へのアクセスが大幅に制限され、これまで以上に多くの人が計画外の妊娠を避けたいと願う中で避妊薬の必要性が高まるだけでなく、最高裁の判決は避妊薬そのものの入手についての懸念にもつながっている。
今回の判決を批判する人々は、1965年に最高裁が下した「グリスウォルド対コネチカット州」判決(プライバシー権を確立して避妊を合法化したもので、当時は夫婦にのみ適用)が、今回の中絶に関する判決と同様の法的根拠に基づいていることから、覆されることを危惧している。中絶禁止の中には避妊薬や別の避妊法も含まれると解釈される可能性がある、と批評家は懸念している。