中絶の合憲性を否定した米国、政治経済・医療など影響は各方面に

Getty Images

米連邦最高裁は6月24日、中絶の権利を認めた「ロー対ウェイド」判決を覆した。中絶が「憲法で保障された権利ではない」との判断が示されたことで、米国の政治、経済・企業、生殖医療、その他のプライバシー権には、どのような影響が及ぶことになるのだろうか?いくつかの疑問と、それらに対する答えを紹介する。

中絶を禁止する州は増える?


ほぼ間違いなく、そうなりそうだ。中絶権を支持する米ガットマッハー研究所は、その数は26州まで増える可能性があるとの見方を示している。

連邦最高裁が「ロー対ウェイド」判決を覆せば自動的に中絶を禁止することを定めた「トリガー法」を成立させていた州は、合わせて13州。そのうちルイジアナ、ケンタッキー、サウスダコタの3州は、最高裁が24日に判断を示すと直ちに、中絶を非合法化した。

ただし、ルイジアナ州ではトリガー法を巡る訴訟が起こされたことを受け、州裁判所が27日、発効の一時差し止めを命じている。

全米で中絶が禁止される可能性は?


今回の最高裁の判断が意味するのは、中絶を合法とするか否かの判断が各州に委ねられるということであり、直ちに中絶が全米で禁止されるということではない。

共和党の議員らは、すでに全米での禁止についての議論を始めているが、同党支持の有権者の多くは、それを望んでいないとみられる。5月にCBSニュースと調査会社ユーガブが実施した調査では52%が、「議会は中絶を違法にすべきではない」と答えている。

レイプや近親相姦による妊娠は例外?


中絶の禁止を決めている州はすべて、母親の生命に危険がある場合を例外としている。だが、レイプや近親相姦による妊娠の場合には中絶を認めるとしている州は、ほとんどない。

「ロー対ウェイド」判決が覆されれば中絶を禁止する「トリガー法」を成立させていた州のうち、レイプ・近親相姦による妊娠を例外と定めているのは、ユタ、アイダホ、ノースダコタの3州のみだ。

中絶に科される罰則は?


テキサス、ユタの両州をはじめ、トリガー法を整えていた州の多くは、中絶の処置を行うことを重罪とし、罰金や禁錮刑を科すこととしている。

刑期はルイジアナ州の最長2年、テキサス州の最長20年など、州によって異なる。また、ワイオミング州は罰則を明確に定めていない。いずれの州も、刑罰の対象とするのは中絶を求めた人ではなく、中絶の処置を行った者としている。
次ページ > 不妊治療が困難になる?

編集=木内涼子

ForbesBrandVoice

人気記事