経済・社会

2022.07.12 06:30

核戦争で地球は小氷河期に 最大20億人が飢餓に直面する


特に北極から北大西洋、北太平洋にかけての光と海水温の急激な低下により、海洋食物網の基礎である海藻が死滅し、実質的に海洋の飢饉が起こる。そうなれば、ほとんどの漁業や養殖業がストップしてしまう。

海は陸地よりも回復に時間がかかる。米露の核戦争という最悪のシナリオでは、海洋の回復には表層で数十年、深層で数百年かかると予想される。一方、北極の海氷の変化は数千年続き、事実上「核による小氷河期」となる可能性がある。海洋生態系は最初のかく乱と新たな海洋状態の両方によって大きく破壊され、漁業のような生態系に頼る産業に長期的かつ地球規模の影響をもたらす、と著者はいう。

「核戦争はすべての人に悲惨な結果をもたらす。世界の指導者たちは以前、私たちの研究をきっかけに1980年代に核軍拡競争を終わらせること、5年前には核兵器を禁止する条約を国連で可決した。今回の研究が、より多くの国に核兵器禁止条約の批准を促すことを望む」と共著者でラトガース大学環境科学部特別教授のアラン・ロボックは述べた。

著者らは、火山の噴火は核戦争後に起こるかもしれないことをより小規模で教えてくれると指摘する。歴史を通じて、大規模な噴火と、噴火によって地球の大気中に噴出した粒子雲は地球と文明に同様の悪影響を与えてきた。

「核戦争は回避できても、火山の噴火は必ずまた起きる。これについてはどうすることもできない。そのため、レジリエンスや社会のあり方については、避けられない気候ショックに備えるために何をすべきかを考えることが重要だ」とハリソンは指摘する。「しかし核戦争を回避するためにできることはすべて行うことができ、また行わなければならない。核戦争の影響は、世界的に壊滅的なものになる可能性が高すぎる」と語った。

翻訳=溝口慈子

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