全米労働関係委員会(NLRB)によると、労組結成の請願は急増。労組未結成の労働人口の規模と比べると、こうした動きは小さいものだが、労組推進派やバイデン政権は、この勢いがさらに拡大することを期待している。
米国で労組結成に賛同する労働者が増えているのはなぜか? 米国のほぼ全土と大半の職種では、労働者不足が起きている。こうした状況で、労働者の交渉力が強まっていることは驚きではない。だがここで生じる重要な疑問は、労働者が多くの他企業が出している求人に応募する代わりに、労組結成に労力をつぎ込んでいるのはなぜか、だ。
労組結成の動きは多くの場合、賃金や福利厚生に対する不満よりも大きな問題の存在を示している。現在、商品やサービスに対する需要は伸びているが、労働年齢の人口は増えていない。多くの人は、人手不足のオフィスや店で苦労して働いている。
また、会社を辞める人が相次いだ「グレート・リジグネーション」現象で転職をしたばかりで、新たな職務にまだ慣れていない人も多数存在し、そのため経験豊富な労働者は新人の不手際をフォローしなければいけない。企業は採用に必死で、職務に適していない人や、そもそも社会人失格の人を採用してしまうこともある。業務量増加のプレッシャーは大きく、全米で人手不足が生じている。
その結果生まれるのが、ストレスだ。ストレスは、怒りと不満につながる。こうした厳しい職場では、管理職の失敗が労働者にとって大きな不満の元となる。上司がえこひいきをしたり、不当な理由で部下を叱責したり、難しいシフトを与えたりすれば、労組結成の圧力は高まる。
企業は、この問題にどう対処できるだろうか? 最善の対策を取るには、労組結成の発起人が現れるよりもずっと前に取り組みを始めなければいけない。労組結成の動きは通常、従業員が不当な扱いを受けていると感じた際に生まれる。労組は賃上げや福利厚生の改善を要求するが、多くの場合、そのきっかけとなるのは不公平感だ。